COLUMN

第591回 石塚運昇さんと第9話

『ユリシーズ』第9話の放映を観て何かお気づきになった方、
違和感を感じられた方、いらっしゃるのではないでしょうか?
それには訳があります

 たしか6月中旬か下旬のこと、以前にも説明したとおり『ユリシーズ』は毎週ノンストップでコンテを上げていた(最終話脱稿が8月上旬)ので、アフレコもかなり快調にこなしていた最中だったと思います。「運昇さんが入院される」と委員会から報告があったのは。その時の話では「最低で2ヶ月ほど」と言われたので「9話のダビング直前ギリまで待ちます」と俺。それから1ヶ月後くらいでしたか。再度委員会より「『運昇さんが現場に戻ってこられないかもしれない』と事務所から連絡があり、残った9話と最終話のナレ録りが、できなくなる可能性もあります(10、11話はもともとナレーション部分がありませんでした)。そこでまだ放映開始前なので、ナレーションを別の方にして1話からすべて録り直しますか、監督?」と。

いや、まだ闘病中でいらっしゃるのに、縁起でもない最悪の事態を想定して、最初から他の人で録り直すなんて自分はしたくないです! やっぱりこちらが熱望してお願いした側なら、希望をもって待つのが礼儀だと思うし、それでもし万が一のことがあったとしても、ナレーションではないやり方で乗り切るのがプロの仕事でしょう! もしそうなったら俺が編集でなんとか埋めますので、ナレーションは石塚運昇さんのままでいきましょう!

が俺の答え。
 そして8月中旬、訃報が届きました。思えば『ベルセルク』に続いてナレーションをお願いしたのですが、あとで聞いた話によると、その頃も病院からスタジオに通われていたそうです。『ベルセルク』よりもさらに「歴史もの」の風格を『ユリシーズ』に与えてくださった運昇さん。ナレーションは本当に運昇さんでよかったです。

謹んでご冥福をお祈りいたします

 ゆえに、9話の冒頭は歴史パートに前回までのあらすじをコラージュして、エンディングを30秒長くして、ナレーション分の尺を埋めたというわけでした。
 で、最終話は——観てください!