COLUMN

第589回 動画と原画と作監

 前回からの続き。アニメーターとして動画・原画・作監とひととおりキャリアのある方なら、口に出さないまでも薄々感じてる方のほうが多いと思うのですが

動画が早くてキレイな人が巧い原画マンになるとは限らないし、その激巧な原画マンが必ずしも良い作画監督になるとは限らない!

のです。いつの時代でも先達らは「今の若いモンは」「俺らが新人の時は」などと叱咤し、自身が味わったのと同じ苦労を後輩・新人にも課そうとするものです。アニメーターで言うと

動画は月1000枚で1人前!
原画は月で半パートが基本!
作監になるには最低原画5年のキャリアが必要!

などなど。これらは実際、自分が新人の頃、先輩に言われた事柄です。ちなみに俺が新人の頃は、動画月300〜400枚で3年間、原画は月5〜60カット(ただしテレコムはアメリカの合作時は秒換算になるので月6〜70秒)で4年間。その後フリーで演出2年ほどやって、監督をやらせてもらえるようになり、監督キャリアはもうぼちぼち15年でしょうか。ね? 月1000枚も月半パートもこなせてなくても、なんとかやってます。要するに、例えば「動画何百枚を何ヶ月続けたら原画試験を受けられて、原画何年で作監へ」と決まってる会社(スタジオ)があったとして、多分そこにはそれほど根拠などなく、ただただスタジオの作画の長が「自分の若かった頃は」の根性論を当てはめて「自分と同じ苦労を味わっていない人は上へ上げたくない」を実践してるだけな場合が多いと思うのです。体育会系的な。だから、これはあくまで私見ですが

昨今、人での足りないアニメ業界で必要なことは「アニメの本数を減らせば人手が足りる」理論などではなく、動画マン・原画さん・作監様の階級意識を少々考え直し、そのスタッフが今できることを会社側が適材適所に上手く配置して、とにかく「画の生産量」を上げる——極端に言うと、アニメ一筋の職人だけで画を作ろうとするのではなく、パート・アルバイトもPCを使ってアニメ作りに参加してもらうべきでは?

と。PC・デジタル作業を使えば比較的単純作業を増やすことができますから。自動中割りとか。それに重労働なアニメ作りはイヤでも、パート・アルバイト感覚の距離感でならアニメ作りに参加してみたい! という人は結構いると思いますから。そもそも、良い動画マンと良い原画マンと良い作監にはなんの因果関係もない——あ、ここまで言うとぶっちゃけ過ぎか!? 申し訳ありません。