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第143回 もう一度、宝島を 〜宝島 オリジナル・サウンドトラック〜

 腹巻猫です。日本コロムビアの「Columbia Sound Treasure Series」の1タイトルとして「宝島 オリジナル・サウンドトラック」の発売が決定しました。TVアニメ『宝島』の主題歌・挿入歌・BGM等、現存する音源を網羅した2枚組完全版。発売日は11月28日です。
 本コラムでも一度『宝島』を取り上げています。2013年7月2日更新の第13回、5年も前でした。そのとき本文の最後で“「『宝島』完全版サントラ」がファンの悲願”と書いた夢が実現する日が、ついに来たのでした。
 そこで今回は、この「宝島 オリジナル・サウンドトラック」の気になる内容について紹介したいと思います。『宝島』は2度目の登場となりますが、5年ぶりということでお許しを。


 出崎統監督のベストに推すファンも多い名作『宝島』が放映されたのは、1978年10月〜1979年4月。今年が放映40周年の節目になる。その記念すべき年に完全版サウンドトラックが実現したのは本当にめでたい。今回のアルバムは筆者が企画を持ち込み、構成・解説・デザイン案の提示など、全面的に制作に関わらせていただいた。
 発売日が近いわりには、まだジャケット画像やトラックリストが公開されておらず、気をもんでいるファンも多いだろう。以下、宣伝を兼ねて、全体の構成と今回初めて収録される予定の音源について紹介していきたい。

 『宝島』の主題歌・挿入歌・BGMはすべて羽田健太郎によるもの。当コラム第13回でも書いたとおり、その音楽は過去に3種類のアルバムで発売されている。

 LP「宝島(ヒット曲集)」(1978年発売)
 LP「テレビ・オリジナルBGMコレクション 宝島」(1980年発売)
 CD「FOREVER SERIES 宝島」(1992年発売)

 「宝島(ヒット曲集)」は放映中に発売された唯一の音楽集で、ステレオ録音の主題歌・挿入歌・BGMを収録。「テレビ・オリジナルBGMコレクション」は放映終了後にファンの熱心な声に応えて発売されたアルバムで、劇中で使用されたモノラル録音のBGMを収録。「FOREVER SERIES」はステレオ音源とモノラル音源をミックスして、1枚で『宝島』の音楽の全体像がつかめるように構成されたアルバムだった。
 3種類のアルバムの収録内容は少しずつ重なっている(重複して収録されている曲がある)。その上、3種類そろえても未収録曲があるのがファンには悩ましいところだった。
 今回は、ステレオ録音のアルバム「宝島(ヒット曲集)」をオリジナルの曲順で復刻することと、モノラル録音のオリジナルBGMを完全収録すること、このふたつをテーマに全体の構成を考えた。
 2枚組のうち1枚目が「宝島(ヒット曲集)」の復刻。2枚目がオリジナルBGM集。これが基本的な構成である。
 「宝島(ヒット曲集)」は『宝島』の記念すべき音楽アルバム第1弾。子ども向けを意識した歌が入っていたりして、やや本編とはイメージが異なるが、唯一のステレオ音源であり、羽田健太郎の初ソロアルバムとしても重要な1枚だ。音源自体は「FOREVER SERIES」ですべてCD化されているものの、これまでオリジナルのままの形(曲順)でCD化されたことは一度もなかった。
 なので、1枚目は「宝島(ヒット曲集)」を当時のままの形で復刻してもらった。ちなみに曲順は次のとおり。

  1. 宝島(歌:町田よしと、コロムビアゆりかご会)
  2. ベンボーと僕(歌:藤田修、コロムビアゆりかご会)
  3. 海は僕の生命(いのち)さ(インストゥルメンタル)
  4. シルバー船長はすごい奴(インストゥルメンタル)
  5. ゆかいな船旅〜遠い南の島(コーラス:トロピカル・シンガーズ)
  6. 小さな船乗り(歌:町田よしと)
  7. まだ見ぬ世界へ(歌:町田よしと、コロムビアゆりかご会)
  8. 不気味な宝島(インストゥルメンタル)
  9. 俺たちゃ海賊(歌:こおろぎ’73、シージャック)
  10. 遠い故郷(ふるさと)(インストゥルメンタル)
  11. 航海日誌(歌:町田よしと)
  12. 大海戦〜夕陽の大船団(インストゥルメンタル)

 レコードでは1〜6がA面で、7〜12がB面。A面の最後にエンディング主題歌「小さな船乗り」が置かれ、アルバムの最後を「大海戦〜夕陽の大船団」という迫力満点のインストゥルメンタル曲が締めくくるドラマティックな構成になっている。
 曲順には作曲家やディレクターの意図が反映する。A面とB面の対比や、曲と曲のつながりなど、音楽的な流れと物語を意識しながら聴くと、より味わい深い。何より、ハネケンの瑞々しい宝島サウンドをステレオで一気呵成に聴く快感は格別である。レコード盤を知る人もそうでない人も、放映当時を偲びながらお聴きいただきたい。
 2枚目は『宝島』BGM集の決定版をめざし、モノラル音源のBGMとTVサイズ主題歌のみで構成した。
 今回発掘した『宝島』のオリジナルBGMはバージョン違いも含めて約90曲。そのうち、これまで商品化されたのは45曲くらい。およそ半数にあたる45曲ほどが今回初収録となった。
 BGMの構成については大いに悩んだ。『宝島』のBGM集としては、「テレビ・オリジナルBGMコレクション」と「FOREVER SERIES」という2枚の先例がある。どちらもファンの思いを汲んで構成されたもので、よく練られた曲順である。その2枚を参考にさせていただきつつ、本編で使用されたBGMをすべて精査した上で、『宝島』の雰囲気と物語を追体験できるようにと完全新構成でまとめた。
 実は当初は2枚目にオリジナルBGMが完全収録できると考えていたのだが、予想していた以上に音源があり、CD1枚は収まらないことがわかった。そこで、本編未使用曲や同一Mナンバーのバリエーション(テイク違いやサイズ違い)の一部を別にし、本編でなじみのある曲だけで75分超にまとめている。その分、テンポよく引き締まった構成になったと思う。はみ出した分は1枚目のボーナストラックに収録してあるのでご安心を。
 今回の作業でわかったのだが、『宝島』にはいわゆる流用曲やライブラリ音源の使用はない。劇中で流れた曲はすべてハネケンのオリジナルである。過去の音楽集を聴いて、「あの曲が入ってないな」と思っていたファンの方も、今回は全部入ってるので楽しみにしていただきたい。

 さて、ファンが気になるのは、初収録音源にどんなものがあるかということだろう。
 ここからは、『宝島』の音楽の全体像に触れつつ、初収録音源を紹介していきたい。
 まず、歌曲に関しては劇中で幾度となく歌われている「海賊の合唱」という歌がある。同じメロディに別の歌詞がついた「俺たちゃ海賊」という歌が「宝島(ヒット曲集)」に収録されているのだが、こちらは劇中で使われていない。劇中使用されたバージョンは「FOREVER SERIES」に収録されているのだが、さらにいくつかのバリエーションがあることがわかった。こおろぎ’73によるアカペラ版とピアノ弾き語り版である。ピアノ弾き語り版は歌詞が一部異なるデモ版と思われるバージョン。聴いて驚きのお宝音源である。
 また、正副主題歌のメロオケが何タイプか発見された。このうちエンディング主題歌のサックスによるメロオケは劇中で使用され、商品化もされているのだが、オープニング主題歌のメロオケもあったのだ。本編未使用の初公開音源である。
 次回予告音楽にはオープニング主題歌アレンジが使用されている。これはメロオケとは別に録られた「TVスポット用音楽」というもので、6タイプが確認された。TVで流れる番組宣伝スポットに使われたものと思われる(残念ながら映像は未確認)。
 そしてBGM。当コラムの第13回で書いた「大海戦」の別バージョンももちろん収録。加えて、追加録音BGMを一挙収録した。そう、本作には追加録音BGMがあったのである。以前は「追加録音とおぼしきBGM」と、もやっとした書き方をしたが、今回の音源探索でハネケンのオリジナルであることが明らかになった。
 追加録音BGMが使用され始めたのは第15話「シルバー式降伏のすすめ」から。宝島での財宝争奪戦がいよいよ激しくなってきた時期だ。おそらくはジムの活躍を描写する曲や海賊の恐怖を描写する曲が足りないということで追加録音が計画されたと思われる。
 たとえば第15話で海賊たちが砦の井戸に動物の死骸を投げ込んだことにジムが気づく場面のショック音楽。同じく第15話でジムが砦を抜け出して川へ水を汲みに行く場面の軽快なフュージョン風の曲。第16話で海賊たちの砲撃を止めるためにジムが皮舟をこいでヒスパニオラ号へ向かう場面のコミカルな曲。第17話での海賊たちの仲間割れの場面に流れたジャジーなサスペンス曲。いずれも宝島での冒険を盛り上げた重要曲だ。
 これまで追加録音BGMは一度もレコードやCDになっておらず、すべて今回が初収録になる。『宝島』ファンにとっては、待ちに待った商品化。「生きててよかった」「おれの一番大切なものは……今はこのCDだ」と思わず言いたくなる涙の初収録である。
 上記のうち、「海賊の合唱」の各種音源と主題歌メロオケ、TVスポット用音楽等は1枚目のボーナストラックにまとめ、追加録音BGMは基本的に2枚目のBGM集に組み込む形で構成した。
 ブックレットには過去の音盤に羽田健太郎が寄せたコメントの再録や筆者自身がハネケンから聞いた話を盛り込んだ解説、BGMリスト等を掲載。放映40周年にふさわしい宝物と呼べる内容になったと思う。

 前にも書いたが、筆者にとって『宝島』完全版音楽集の実現は、昨年末リリースされた「家なき子 総音楽集」と並ぶ長年の悲願だった。未収録音源というお宝を探す旅は、長い年月を経て、ようやくゴールにたどりついた。満足とともに、「これで旅も終わりか」という一抹の寂しさも禁じ得ない。
 が、冒険の旅に終わりはない。いつの間にか、ジムよりもシルバーに近い年齢になってしまったが、その気になれば、フリントはまだまだ飛べるんだ。過去をふり返るためではなく、新しい旅へ出るためにこのアルバムを。そんな風に、明日への勇気をもらえる音楽集として、「宝島 オリジナル・サウンドトラック」を聴いていただけたら最高だ。

宝島 オリジナル・サウンドトラック
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