COLUMN

第576回 アニメーターと役者とデジコンテ

 前回からの続き、のつもり。

アニメのキャラクターは何人もの手を介して作られるもの!

だと思います。皆さんご存知のキャラクターデザインや役者(声優)さんだけではキャラクターは動かないからです。アニメの行程を簡単に書くと、脚本の方(原作ものの場合はその前に原作者さん)がセリフ・大まかな芝居を書いて、それをコンテマンがコンテにし、それに監督チェックが入り、そのコンテに沿って演出の方が作画に発注、そして原画→演出チェック→作画監督→動画・仕上げへ。極端な話、カメラの前に役者が立てば何かしら動く芝居が撮れる実写と違い、アニメのキャラクターはそのすべての行程を経なければ指1本動くわけがありません! 当たり前ですよね。たぶん俺が役者さんに対して上から目線な監督になれないのは、自分が監督である前にアニメーターだからでしょう。もちろん大概は脚本ありきの上ですが、例えば『ユリシーズ』でも役者さんから「こーゆー言い方ってします?」的な質問がきた時、「俺はこんなつもりでコンテ描いてましたけど」と説明した上で「じゃ、どう演りたい?」と訊き「ま、思ったようにやってみてください」と本番に臨むんです。で、その芝居を聞いて違和感がなければ「OKです! こちら画の方を直します」となるわけ。役者さんがそのキャラクターになりきって感情を繋ごうとするのは、アニメーターがそのシーンの芝居(動き)を考えるのと似てると思うんです。だから役割が違うだけで、一緒にキャラクターを作ってるんですよね。故に自身で画を描かない監督さんが「自分の思ってる演技を違う!」と言っては役者が泣くまで演技をくり返させる録り方が理解できないのです。ま、やり方の違いなのでそれを批判するつもりは毛頭ありません。ただ、

何を言ってもアニメのキャラクターは画と声で半分半分! 役者さんの芝居が多少自分のプランから逸れても、もう半分の画の部分で補完できる腕さえ身につければ、もっといろんなモノが寛容に受け入れられる!

のに、とは思いますが。
 まあ、そんなこんなで「アニメーターは役者」ですから、こないだ(前回分)の食事会でも役者さんらとそんな話に。「俺自身もアニメーターで、皆さんと同じ役者の一種だからなるべく一緒に考えながらキャラクターを作る。それが自分のやりたいアニメ作りです」と。
 で、現在は『ユリシーズ』のオープニングコンテとラフ原画の同時進行。本編は制作会社さんからの要望で久々の紙(アナログ)コンテ。OPはカット尺が決めやすく、ラフ原の描き足しなどの効率の良さから再び「Storyboard Pro」によるデジタルコンテ。近作『ベルセルク』や『Wake Up, Girls! 新章』のOPコンテもこれを使っていて、コンテを描きながらラフ原を足し、尺を取りつつムービーまで作れる楽しいツールです! 参考までに初のムービーを!

■『Wake Up, Girls! 新章』OPコンテムービー(コンテ・演出/板垣伸)

©Green Leaves/Wake Up, Girls! 3製作委員会

な感じです。大ラフの部分(水色画面)はCGパートのため、あえてラフのカット割りのみにして、直にCG会社へ赴き後で調整しました。作画パートは自分のこのコンテの画を基にデジタル作画。コンテで描きたいだけ描いて、動かせてカメラワークも付けられるのが素敵です。