COLUMN

第567回 続・リテイクのコツ

 前回の続き。『WUG! 新章』のパッケージ(BD)リテイクのやり方。上のように作打ちをしっかりとして、

・原画から描き直しカット
・作監修正カット
・T.P(動画・仕上げ)修正カット

に区分けします。そうすると、だいたい次の日からT.P修正→作監修正→原画の順で上がってきて、朝6〜7時、誰もいない会社に入った俺の机にカット袋が積まれているわけです。

 ひとまずこの連載の原稿に少し手をつけて、

 その後、粛々とリテイクのカットのチェックをします。T.PがOKの場合はそのままセル検→撮影へ。再リテイクの場合はその内容を指示書きします。「この中割りはラフを入れた方が早いな」と思った時は自分でラフを入れて再リ。同じく原画や作監修正もOKなものと再リのものとに区分け。さらに同じく難しいカットは俺のほうでラフを入れます。もちろん「原画・作監OK」なものは、後日「T.P上がり」として机に置かれる。この繰り返し。それが20〜30カット(多い時は40カット以上)です。


 要するに、撮影上がり(ラッシュ)を観て、「まだ顔が崩れとるじゃないか! 動画……いや作監修からやり直し!」と仰る監督様は、1カットの原・動・仕をやり直すのに何千円〜何万円かかることを知らないんです。ところが監督と制作が力を合わせて管理・確認をすれば、もっと具体的に

と書けるわけ。こう言うとバブル期の巨匠監督を例に「○○監督は何千万かかったシーンを丸ごと灰にした」だの昔の話を持ち出して「金を贅沢に使った武勇伝」を、嬉々として自身の体験であるかのように語って「アニメはこうあるべき!」と仰られる監督様もいます。でもそれは、まず全国何百万人が楽しみにしてる作品を監督する巨匠になってから言うべきです。自分みたいな監督は「お金を上手く使う」ことが必須。「アニメの制作費を上げろ!」と訴えるより先に「どーやったら上手に制作費を使えるか?」を考えるところからでしょう。分不相応な贅沢っていちばん格好悪いと両親から教わった板垣です。