COLUMN

第549回 原画から演出

 昔、テレコムにいた頃、大塚康生さんが大胆に

アニメーターは誰でも演出できますから!

と仰ったのを憶えてます。それを聞いた時は、我々アニメーターに夢を持たせてやろうと考えた上での、いつもの気さくで多少大雑把な大塚さん発言かと思ったものです。元々「出崎統監督みたいな演出家になりたい!」が自分の夢だったので、そのお言葉には確かに勇気をいただきました。この連載でも初期に書いたとおり、テレコム・アニメーションフィルムに入社しておいて

アニメーターはあくまで通過点〜

と考えてた板垣です。先輩方からも「大塚さんと友永(和秀)さんから原画教わって、目指すのは出崎さん!?」とすっかり異端扱い。とにかく、その頃よく周りの先輩に言ってました

好きなアニメは『あしたのジョー2』『宝島』『未来少年コナン』!
宮崎アニメは好きだけど、出崎さんのはフィルムとして大好きなんです!

と。たいていの先輩方から「出崎さんと宮崎さんじゃ正反対でしょ」と呆れ(?)られたものですが、両監督ともアニメーター出身という意味でも似てると俺は勝手に思っています。だって画づくりはまるで違いつつも、演出スタイルはとても主観的でしょう? 昔、友永さんに聞いたことがありますが「高畑(勲)さんは主人公をあくまで客観的に描く方で、宮さんは主人公になりきる方」だと仰ってました。それは単純な話で

アニメーターは究極、
自分自身をモデルにして芝居を組み上げるから!

です。俺も若い頃、友永さんから

と実際にやらされたりしたものです。やはり主観こそがアニメーター演出家最大の武器なのだと思うし

物語(ドラマ)をコンテ上で、
自らが主人公になって楽しんで描く!

姿勢が出崎監督も宮崎監督も非常に似ているように思うのです。で、ケレン味てんこ盛りなのが出崎監督で、純正アニメーションなのが宮崎監督だと。俺的にはどっちもあり!
 ま、そんなわけで通過点になるはずの作画をやっても、コンテをやっても楽しくて仕方がない板垣ができあがったのです。そう、大塚さんが仰ってた言葉は本当だった! と今更ながら感じてるし、作画と平行して演出業をやってたおかげで「どんな企画でも面白がれる」と分かった気がするのです。こないだふと、友永さんと大塚さんの作画を観て、筆を走らせました。