COLUMN

第534回 人生は出崎アニメ

人それぞれ——仕事のやり方には色々あっていいんじゃないかな……

 これ、出崎統監督の劇場版『BLACK JACK』のラストシーン、B・J最後の台詞です。1996年公開当時に聞いた時はピンとこなかった台詞だけど、今はとても沁みますね。この言葉、議論好き、論破好きな方が聞くと、まず「人それぞれ」に引っかかるんだと思います。「人それぞれと言ってしまったら議論の放棄だ!」と。自分も学生の頃、その手の議論は好きだったので、そのスジの友人と朝まで議論しました。で、今はとっくに止めてます。せめて30代半ばくらいまでに実績を作ってれば、議論・討論・論破で文化人を気取れたかもしれませんが、俺の場合はそのへん皆無なので、粛々と仕事をしています。まあ、もともと文化人に対する憧れも皆無ですが。
 「仕事のやり方は人それぞれ」。この言葉って、出崎監督ご自身のアニメ作りまんまな感じがして好きなんです。例えば90年代に入って「オリジナルをやったアニメ監督こそが勝ち組」的な風潮が蔓延してきても、出崎監督は原作ものがメイン。『白鯨伝説』くらいでしょう? オリジナル作品は。恐らく、これはあくまで板垣の憶測ですが、出崎監督にとって素材はなんでもよく、原作ものかオリジナルかなんてどーでもよかったのではないか?

描きたいのは「テーマ」じゃなくて「人間」である!

と。あと周りの監督がやらなくなった3回PANや止めハーモニーも最後までやり続けた姿勢にもシビレます! 生前録られたオーディオコメンタリーでも「何が正しくて何が間違ってるかを決めつけちゃいけないと、俺は思う」とも仰られてたのも印象的! だめだ、疲れると出崎アニメを語りたくなる。