COLUMN

96 「LO画集 2-A -TAKAMICHI LOOP WORKS-」

 今日はアニメではなくて、本についての話。

 最近買った本の中で、よかったのが「LO画集 2-A -TAKAMICHI LOOP WORKS-」だ。マンガ雑誌「COMIC LO」の表紙イラストを集めた画集である。タイトルが示す通りに、これは2冊目の画集だ。1冊目の「LO画集」には 「COMIC LO」vol.50までの表紙イラストが、「LO画集 2-A」にはvol.100までの表紙イラストが収録されている。

 先に断っておくが、「COMIC LO」は成人向け雑誌である。画集の帯には、この雑誌について「ちょっと変わった趣味の漫画雑誌(意訳)」とある。入りやすい表紙のイメージとは違い、ガチな内容であるので、そういった本が苦手な方はご注意を。

 「COMIC LO」の表紙は漫画家、イラストレーターのたかみちによるイラストが使われている。モチーフになっているのは常に少女だ。背景もしっかりと描かれており、季節感のある絵が多い。シチュエーションも凝っている。表紙ではそのイラストにコピーがつけられている。コピーの入れ方も含めて、デザインも決まっている。「COMIC LO」の表紙には作り手のクリエイティブが詰まっている。

 イラストもいいのだが、コピーもいい。イラストの内容に寄り添ったコピーもあるし、飛躍しているものもある。どのコピーもキレがよく、緩急自在な感じがいい。飛躍しているコピーをふたつ、紹介しよう。

 「COMIC LO」vol.21の表紙イラストは、曇天の下で手を繫いで歩いている制服を着た2人の少女だ。手前の少女は傘を持っている。傘はまだ閉じておらず、雨が止んだばかりのようだ。それにつけられたコピーは「ほら。拍手が止んだ。」である。
 何度かこの表紙を見て、拍手とは雨音の事だろうと思い至った。雨に降られて帰宅できなくなった2人は、どこかで雨宿りをしながら、雨音を聞いていた。その音を誰かの拍手だと思って、自分達を慰めていたのかもしれない。だとしたら、何についての拍手だと思っていたのだろうか。そんな想像が広がっていく。雨がやむ事を「拍手が止む」と表するのが詩的であるし、イラストとコピーがひとつになったこの表紙は素敵だ。

 「COMIC LO」vol.52の表紙イラストは、椅子に座ったおさげ髪の少女。つけられたコピーは「母は、少女であった。」である。つまり、少女はコピーの内容を呟いている誰かの母親であり、描かれているのは過去の姿だという事だ。最初に絵を見て、可愛い女の子だなあと思い、その次にコピーを見て、今では彼女が成長し、お母さんになっているらしい事を知る。これも考えさせられるコピーだ。たとえば僕は、少女という存在は女性が成長していく過程の一時期でしかなく、儚いからこそ輝いているのだな、と改めて思った。この女の子なら、優しくて綺麗なお母さんになったのだろうなとも考えた。
 そして、たかみちさんは、誰かの母親の若い姿のイメージでイラストを描いたわけではないのだろう。それがまた面白い。

 このふたつのコピーはイラストからの飛躍が大きなものであり、見る者が解釈するタイプのものだ。 「COMIC LO」の表紙にはそんなふうに解釈を楽しめるコピーがある。そうではないシンプルなコピーも、それはそれで味わい深い。

 「LO画集」にはタイトルロゴやコピーが添えられていないイラストそのものと、コピー等がついた表紙デザインの両方が載っている。1冊目は表紙デザインが小さかったが、2冊目は大きく掲載されており、僕としては2冊目の方が満足度が高い。
 画集の巻末には「LO創作ノート」として各イラストのラフ、デザインラフも収録。たかみちさん、編集W(コピーを考えている編集者であるようだ)、デザイナーの宮村和生さんのコメントも載っており、至れり尽くせりだ。

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