COLUMN

88 オールナイトと『PERFECT BLUE』

 今 敏が監督として手がけた長編アニメーションは『PERFECT BLUE』『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』『パプリカ』の4本である。

 そして、11月19日に開催するオールナイト「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 88 アニメファンなら観ておきたい200本 今 敏のアニメーション」で上映するのは『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』『パプリカ』の3本だ。上映時間の関係で、長編を4本上映するのは難しい。その中から3本を選ばなくてはいけない。では、どうして『PERFECT BLUE』以外の3本を選んだのか。

 誤解を生むといけないので、セレクトした理由を説明しておきたい。

 僕の『PERFECT BLUE』に対する評価が低いというわけではない。むしろ、逆である。『PERFECT BLUE』の現実と虚構が渾然一体となった作劇、サスベンスフルな作りは素晴らしいものだ。今さんの代表作であるのは間違いないし、大変に彼らしい作品であると思う。
 余談だが、トークイベントか取材の席で「『PERFECT BLUE』とTVシリーズの『妄想代理人』が、今さんの本質に近い作品だと思う」と話した事がある。それに対して、ご本人は「そうですかね」と首をひねっていたはずだ。思えば、その時は僕の言い方がよくなかった。別にホラー作品が、今さんらしいというわけではない。彼の持ち味がストレートに出せるのがそういったタイプの作品なのだろうと思う。

 では、どうして『PERFECT BLUE』を今回のプログラムから外したのか。『PERFECT BLUE』がOVAとして制作されたものだからだ。今さんも取材の中で「基本的にはビデオ作品として作ったものでしたから、映画として劇場にかけられたのもの不本意だった」と語っている。今さんが「ビデオ作品として作った」というのは内容と映像の両方についてだ。

 今回のオールナイトは「アニメファンなら観ておきたい200本」シリーズのひとつである。主にはビギナーのアニメファンのために、あるいは今 敏の作品を観た事のない人に向けて組むプログラムだ。だったら最初から映画として作られ、スクリーン映えする作品を選んだ方がいい。それで『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』『パプリカ』の3本を選んだ。いずれも見応えのある作品だ。

 オールナイト「アニメファンなら観ておきたい200本 今 敏のアニメーション」の前売りチケットは、昨日の段階で完売したそうだ。皆さま、ありがとうございます。次に今さんの作品でオールナイトを組む機会があったなら、『PERFECT BLUE』を入れたいと思っています。

●サムシング吉松のコラムinコラム

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