COLUMN

83 「この人に話を聞きたい」第百九十回はのんさんでした

 アニメージュ最新号(2016年11月号 VOL.461)の「この人に話を聞きたい」では『この世界の片隅に』で主役を務めた女優ののんさんに登場していただいた。

 信じてもらえないかもしれないが、『この世界の片隅に』の出演が決まる前から「この人に話を聞きたい」で、彼女の取材を検討していた。

 彼女はかつてネットで好きなアニメについて発言しており、その中で『ef – a tale of melodies.』についても話題にしていた。3年ほど前にそれを目にして「へえ、あんなマニアックな作りの作品を観るんだ」とちょっと驚いた。それ以来、「好きなアニメ」をテーマに、彼女に取材する記事をどこかの媒体がやらないかと思っていた。

 今年の春に、彼女がネットで『おそ松さん』の凝りに凝ったコスプレ写真を披露した時に「この人に話を聞きたい」で取材するのはどうだろうかと思いついた。長く続いている連載だし、たまには変化球の企画もいいのではないかと「アニメージュ」の川井久恵編集長と話していたのだ。のんさんへの取材について川井編集長も快諾してくれたのだが、よく考えてみると好きなアニメの話だけで4ページは埋まらないだろうし、それを「アニメージュ」に載せるのは不自然だよなあと思い、その時はご本人にオファーをする前に、自分で企画を却下してしまった。

 ところがその後、のんさんが『この世界の片隅に』で主役を演じる事が決定。しかも、試写で作品を拝見したところ、その芝居が素晴らしかった。他にも多くの方が同じ内容のコメントをしているが、映画を観ている間「主人公のすずさんという人物が本当にいる」と思えたのだ。素晴らしい。これだけの仕事をしたのだから「この人に話を聞きたい」でお話を聞くのも問題がない。

 取材前には『この世界の片隅に』についての話を聞いて、後半で好きなアニメの話にもっていって、そこから今後の仕事についての話に繫いでいこうと思っていた。ところが記事を読んでくださった方はご存知の通り、取材の途中で『この世界の片隅に』監督の片渕須直さんが登場。「一瞬だけ口を挟んでよい?」と前起きして、のんさんについて語り、そして、去って行った。ライターとしては、こんな美味しいネタを逃すわけにはいかない。記事で片渕監督の乱入を活かす事にした。
 
 片渕監督が現れる前に、好きなアニメについての話もうかがっていたのだが、記事の流れとしておさまりがよくないので、その分は本文ではカット。うかがった話の一部を、普段は作品リストを掲載している部分にコラムとして掲載した。「この人に話を聞きたい」としては取材相手だけでなく、記事の構成も変化球の回となった。

 『この世界の片隅に』はアニメーションとして豊かな作品だ。そして、のんさんの芝居も素晴らしい。是非とも劇場で観ていただきたい。今回の「この人に話を聞きたい」は具体的に個々の場面の演技について聞いている。劇場で鑑賞する前に目を通して、鑑賞した後にまた改めて読むといいかもしれない。

●サムシング吉松のコラムinコラム

[関連リンク]
「この世界の片隅に」公式サイト
http://konosekai.jp

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