COLUMN

81 1981年の「アニメージュ」付録のポスター

 古本屋で昔のアニメ雑誌の付録が1点100円で売られているのを見つけ、ポスターを数点購入した。購入したのはいずれも「アニメージュ」の付録だ。僕の仕事場には「アニメージュ」本誌は創刊号から最新号まで揃っているが、付録は無くなったりして、全部があるわけではない。古本屋で手にとって、ああ、こんな付録もあったよなあと思ったのだ。
 
 ひとつが「IDEON SPACE RUNAWAY SPECIAL FILM PHOTOGRAPHS 104 NOT YET ON AIR(伝説巨神イデオンテレビ未公開フィルム)」。これは1981年7月号の付録だ。『伝説巨神イデオン』は物語途中の39話で、TVシリーズの放映が打ち切られており、後に劇場版で完結する事になる。放映されなかった40話以降の4話分をダイジェストしたフィルムが、イベント「アニメグランプリ」で上映された。ポスターはそのダイジェストフィルムの画像で構成したものである。
 ポスターのサイズはB2で、そこに104枚のスチールが並んでいる。製作途中のラッシュフィルムを使ったのだろう。原撮カット、動撮カットも掲載されている。その色が塗られていない線画だけのスチールが何なのか分からなかった読者も多かったに違いない。分からなかったとしても、制作現場の生々しさは伝わったのではないかと思う。
 作画のよい表情芝居のカットを連続して載せており、アニメーションディレクターである湖川友謙さんの巧さを愉しむ事のできるアイテムでもある。未放映分のフィルムでポスターを作ったという点でも、原撮カットや動撮カットまで収録したという点でも、湖川さんのいい画をチョイスしたという点でも、実にマニアック。

 もうひとつが『Le Garcon 夏への扉』。こちらは1981年6月号の付録だ。こちらもたっぷりとスチール写真を使ったものだ。竹宮惠子原作の劇場アニメーション『夏への扉』のファーストシーンからラストシーンまでの本編カットを並べている。キャプションもついていて、物語が追えるようになっている。『夏への扉』は画作りに非常に凝った作品で、その突出ぶりはアバンギャルドですらあった。このポスターはその映像の魅力をたっぷり詰め込んでいる。
 このポスターの凄いところは、掲載したカットの選びを、監督である真崎守自身が担当している事だ。さらにポスターの下部には、真崎監督が『夏への扉』の演出についてコメントしている。いいねえ。かっこいいねえ。いかにもこの頃の「アニメージュ」らしい。今だったら尾石達也監督にカットを選んでもらい、それで『傷物語』のボスターを作るような企画だ。

 今回取り上げたポスター以外にも、創刊から数年間の「アニメージュ」には意欲的な企画、マニアックな企画が多い。編集者がアニメの面白さだけでなく、メイキング的な部分の楽しみ方を伝えようとしている。現在のアニメ雑誌編集者として見ても、実に刺激的だ。

 と、ここまで書くと「『アニメージュ』の付録と言えば、アレとかアレも凄かったよ」と言われそうだ。分かります分かります。アレとかアレですね。それについてはまた改めて紹介したい。

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