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第90回 空飛ぶ円盤にのっかって 〜UFO戦士ダイアポロン〜

 腹巻猫です。10月22日(土)13時から阿佐ヶ谷ロフトAで「池頼広トークライブ」を開催します。アニメでは『かみちゅ!』『宇宙ショーへようこそ』『COBRA THE ANIMATION』『TIGER&BUNNY』『神撃のバハムート GENESIS』など、TVドラマでは「相棒」「家政婦のミタ」などの人気作・話題作を手がける作曲家・池頼広さんのトークライブ。ベストアルバム2タイトルの発売を記念して、音楽作りの裏話や作品の思い出などをうかがいます。あまりメディアに登場しない池さんの素顔に触れるチャンス。会場でベストアルバムも販売します。前売り券発売中!

池頼広トークライブ 〜ベストアルバム発売記念!〜 http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/50010


 去る9月1日にアニメ制作会社エイケンが発表したニュースに驚いた。「UFO戦士ダイアポロン 放送40周年プロジェクト始動!!」というニュースである。
 詳細は不明だが、初の全話映像ソフト化実現か? など期待がふくらむ。
 そこで今回のテーマは、『UFO戦士ダイアポロン』!

 『UFO戦士ダイアポロン』は1976年4月から9月まで全26話が放送されたTVアニメ作品。作・雁屋哲、作画・海堂りゅう(現・土山しげる)のマンガ「銀河戦士アポロン」を原作にしたロボットアニメだ。
 地球人に育てられたアポロン星人の少年タケシが、巨大ロボット・ダイアポロンを操って故郷の星を滅ぼしたダザーン軍団と戦う物語。マンガ原作となっているが、原作にはロボットは登場しない。アニメでは3体のロボットが合体してダイアポロンとなり、タケシがダイアポロンに「合身」する。そのとき、タケシがダイアポロン内部で巨大化する描写がインパクト抜群だった。『宇宙戦艦ヤマト』をほうふつさせる芦田豊雄のキャラクターデザインと作画が見どころである。

 音楽は、主題歌の作詞・作曲を山本正之、劇中音楽を武市昌久が担当した。
 山本正之と武市昌久は1975年の『タイムボカン』でもコンビを組んでいる。本作は2人にとって『タイムボカン』に次ぐアニメ作品であり、武市昌久が初めて単独で音楽を担当した作品でもある(『タイムボカン』のBGMは山本正之と共作だった)。
 武市昌久は日本コロムビアの洋楽部出身。約2年間勤務したコロムビアを退社後に竜崎孝路に師事し、作・編曲家として活躍を始めた。「いちひさし」「市久」のペンネームも併用して、70年代後半から80年代に多くのアニメソングの作・編曲を手がけている。音楽を担当した作品としては、本作のほかに映画「仮面ライダー 8人ライダーVS銀河王」(1980/菊池俊輔と共作)、劇場アニメ『機動戦士ガンダム』(1980/渡辺岳夫、松山祐士と共作)、TVアニメ『百獣王ゴライオン』(1981)などがある。サックス奏者としても活動している。
 本作のBGMを収録したサントラアルバムは発売されていない。主題歌と挿入歌を収録したLPアルバム「UFO戦士ダイアポロン」が1976年7月にポリドールレコードから発売された。
 このアルバムは長らくCD化されず、中古市場で高値を読んでいたが、2011年に日本コロムビアから発売されたCD6枚組「スーパーロボット主題歌BOX+(プラス) 」にすべての歌曲が収録された。ただし、1曲だけインストゥルメンタル曲が収録されていない。また、CD化の際に曲順も変えられていた。
 オリジナル盤の収録内容と曲順は次のとおり。

1.UFO戦士ダイアポロン
 作詞・作曲:山本正之 歌:子門真人
2.必殺アポロンデストロイ
 作詞:やまもとゆう 作曲・編曲:武市昌久 歌:村上明
3.かあさんの星
 作詞:港大介 作曲・編曲:東久 歌:川島和子、コラール・エコー
4.あおぞら園の人気者
 作詞:港大介 作曲・編曲:東久 歌:千々松幸子、松金よね子
5.UFO少年団
 作詞・作曲:山本正之 歌:子門真人、ブッシュ・シンガーズ
 歌:子門真人
6.ダザーン総統のテーマ
 作曲:山本正之 編曲:西崎 進 演奏:ポリドール・オーケストラ
7.ダザーン軍団の歌
 作詞:吉川惣司 作曲・編曲:武市昌久 歌:ポリドール男声合唱団
8.アポロン星よ安らかに
 作詞:(株)エイケン 作曲:山本正之 編曲:西崎進 歌:村上明、ポリドール男声合唱団
9.星物語
 作詞:吉川惣司 作曲・編曲:東久 歌:川島和子
10.あおぞら園のうた
 作詞:寺尾たけし 作曲・編曲:武市昌久 歌:ブッシュ・シンガーズ

 レコードでは5曲目までがA面、6曲目からB面になる。A面の最後にエンディングテーマが現れる、ちょっと変わった曲順である。
 多彩な作家・歌手が参加した面白いアルバムだ。子門真人は2曲のみの参加だが、主役のタケシ役・村山明が2曲、『宇宙戦艦ヤマト』のスキャットで有名な川島和子が2曲歌っている。作詞には本編の脚本家、やまもとゆう(山本優)と吉川惣司が参加。作曲は山本正之と武市昌久に加え、歌謡曲畑の東久が参加している。
 収録曲中一番の聴きどころは、やはりオープニングテーマとエンディングテーマだろう。
 「UFO戦士ダイアポロン」は、山本正之特有の和のテイストを持ったロック・ナンバー。勇壮なイントロにかぶさる子門真人の「合身!」のシャウトからわくわくする。Aメロは長い音符を使ったやや牧歌的な導入部。8小節を経てBメロに入ると、リズムがウエスタンになって高揚感が増す。ワウギターをバックにたたみかけるCメロを経て、ロボットの名前が次々登場するDメロでは子門のボーカルとシャウトのかけあいが楽しめる。「合身」のサビからはふたたびウエスタン風になり、子門の高音の伸びがたっぷり聴ける。みごとな構成だ。
 エレキギターがメロディを奏でる間奏は、武市も音楽作りを手伝ったと言う竜崎孝路の代表作「必殺」シリーズのBGMを思わせる。劇中ではメインのバトル曲としてこの曲の歌入りかメロディ入りカラオケが使用されていた。
 エンディングテーマ「UFO少年団」はクラビネットのリズムから始まる、オープニング以上にロックテイストあふれるナンバー。子門真人の歌唱もファンク風で、オープニングとは違ったカッコよさがある。ブラックミュージックを意識した武市昌久のアレンジが冴える1曲。
 2曲目の「必殺アポロンデストロイ」は主題歌についで重要な曲。劇中後半になって登場するダイアポロンの新必殺技アポロンデストロイの曲だ。このメロディはダイアポロンの合体シーンや戦闘シーンに流れるBGMにも使用されている。
 アポロンデストロイの登場に合わせて作られた曲とも思えるが、劇中では第5話からこのメロディのBGMが流れ始めるので、もしかしたら当初からBGMとして用意されていた曲に歌詞をつけたものかもしれない。
 シンバルのソロから始まり、ワウギターとブラスが重なって徐々に盛り上がるイントロがドラマティック。村山明のボーカルの合いの手に入る「イヤァ!」のかけ声はどう聞いても子門真人。終始緊張感を持続するバッキングも聴きどころ。劇中のBGMのテイストも味わえる楽曲である。
 村山明はもう1曲、「アポロン星よ安らかに」という挿入歌も歌っている。こちらは山本正之が作曲、西崎進が編曲したミディアム・テンポのムーディなバラード。メロディックな曲想に村山明の端正なボーカルがマッチして、歌謡曲風の魅力的なナンバーになっている。
 川島和子が歌う「かあさんの星」は、東久作・編曲による抒情的な曲。川島和子といえば『宇宙戦艦ヤマト』のスキャットがあまりにも有名で、『グランプリの鷹』『聖闘士星矢』などのスキャット・ワークばかりが注目されがちだが、歌詞つきの曲も歌っているのだ。この曲では、やさしく語りかけるようなAメロと、透んだ高音を生かして歌い上げるBメロ以降の対比がみごと。サビではコーラスをバックにたっぷりと美声を聴かせてくれる。
 川島和子が歌うもう1曲「星物語」は、吉川惣司が作詞、東久が作・編曲を担当したポップなナンバー。アコースティックギターとフルート、フリューゲルホルンなどを使ったアレンジが美しいフォークソング風の曲だ。「ルルル」で歌われるハミング風の部分が『宇宙戦艦ヤマト』のスキャットとは違うやさしい味わいでぐっときます。
 川島和子といえば、今年7月に川越で開催されたコンサート「ウェスタ川越まつり アニソンヒーローズ THE LEGEND」にも出演して美しいスキャットを聴かせてくれた。70年代と変わらぬ歌声にうっとりしたものだ。終演後少しお話しする機会があったが、元気でお仕事を続けているそうなので、音楽関係者のみなさん、女神のスキャットをお願いするチャンスですよ。
 B面1曲目の「ダザーン総統のテーマ」は、山本正之が作曲、西崎進が編曲したインストゥルメンタル曲。クラビネット、エレキギター、サックス、シンセサイザーをフィーチャーしたクロスオーバー風のカッコいいナンバーだ。シンセサイザーが妖しいメロディを奏で、サビでは男声コーラスが「ダザーン」と繰り返す。メロディは悪のテーマというより歌謡曲風(梓みちよの「二人でお酒を」という曲にちょっと似てる)。劇中で使用された印象がなく、アルバムだけのイメージ曲かもしれない。未CD化なのが惜しまれる1曲。
 ポリドール男声合唱団が歌う「ダザーン軍団の歌」は、吉川惣司が作詞、武市昌久が作・編曲した悪のテーマ。オペラ音楽を思わせる重厚なボーカル曲である。エフェクトをかけたコーラスが不気味さを演出している。
 主題歌「UFO戦士ダイアポロン」はもともと子門真人とは別の歌手が歌う予定になっていたがイメージが違うことで録り直しになった、というのは有名な話。そのとき最初に歌った歌手は、オペラ歌手風の朗々とした歌い方だったという。もしかしたら、本曲のソロみたいなイメージだったのかなと想像してしまう。
 「あおぞら園の人気者」は、タケシを助けるUFO少年団のちびっ子チョコ松(千々松幸子)とチョコ松を慕う妹分マコ(松金よね子)が歌う歌。曲調はいわゆるピョンコ節。芸達者の2人が歌っているので、キャラソンとして安心して聴ける楽しい1曲。
 そして、アルバムのラストを飾る「あおぞら園のうた」は脚本の寺尾たけしが作詞、武市昌久が作・編曲した歌。口笛風のシンセをフィーチャーした8ビートの軽快な曲だ。メロディはさわやかな青春歌謡風。しかし、歌うブッシュ・シンガーズの微妙な感じはなんでしょう(笑)。「UFO少年団」のコーラスもそうだが、ちゃんとした少年合唱団ではなく、そのへんの子どもたちを連れてきて歌わせたような適当な感じがする。特にサビの「あおぞら園」のかけあいが、すごく微妙。アルバムとしても、この曲がラストでよいのでしょうか? まあ、いいか。
 これらの挿入歌は、本編中にはほとんど使用されていない。本編の音楽でもっとも印象深い曲は、タケシたちが乗る戦闘機の発進シーンや3体のロボットの発進から合体シーンに流れるBGMだろう。エレキギターとトランペットで演奏されるマカロニウエスタン風の勇壮な曲だ。残念ながらその曲はアルバムに収録されていないが、放送当時発売された朝日ソノラマのソノシートのドラマ「魔獣バグラドンの襲撃!!」の中でたっぷり聴くことができる。

 本アルバムは、資料によっては「主題歌以外はパッとしない」とあんまりな言われ方をされている。しかし、そんなことはない。曲によっては微妙なところはあるが、なかなか味わいのあるアルバムだ。村山明の「必殺アポロンデストロイ」「アポロン星よ安らかに」をはじめ、川島和子が歌う2曲、インスト曲「ダザーン総統のテーマ」など、聴きどころも多い。発売当時のままの形で復刻されていないのはもったいない作品だ。
 「UFO戦士ダイアポロン 放送40周年プロジェクト」の一環として、本アルバムのCD復刻をぜひ期待したいところである。

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