COLUMN

第469回 「出崎」分補充!

そろそろ生活の中に「出崎」分が不足してきました!

 仕事が忙しくなると「出崎アニメ」が観たくなります。で、何回めか分からない『宝島』を1話から観返し、

やっぱりアニメって素晴らしい!!

と。『宝島』がジムやシルバーの物語である事は言うまでもないでしょうが、この歳になってみるとビリー・ボーンズがいい!! ビリーは冒頭3話で、主人公・ジムに宝島の地図を託して死ぬだけの老水夫なんですが、そういう「主人公に行動原理を与える」機能性(?)のみで終わらせないのが出崎統監督なんです。1人の男、その後の物語では忘れ去られる一海賊の死、それが本当に美しく描かれてるんです。死に際に彼の人生でいちばん光り輝いてた時の夢(幻覚)を見る、これが出崎監督の優しさでしょう! 「悪人が改心して善人になる」は本当はぜんぜん優しい演出ではなく、「悪人でしょうがないヤツでも、ソイツがいちばんカッコよかった頃を、誰も知らなくても俺だけは知ってるソイツを描いてやる」って目線が出崎演出であり、それこそ「優しさ」だと思うんです。『あしたのジョー2』のウルフ金串もそうだったし、『ベルセイユのばら』のジャンヌもそうでした。
 でも、この優しい描き方(?)ができたのも、毎週毎週コンテに向かい続けた多作な出崎監督だからこそできたのではないでしょうか? ストーリーを進行させる云々より、コンテの中で描かれるキャラに「オマエはどう生きるんだよ?」と問いかけるようにコンテを切って、大げさに言うとそれぞれのキャラの現在進行形の人生を切り取る感覚でやってるんだと思うんです。だから出崎監督のフィルモグラフィーには「新作準備中」みたいな隙間(充電期間?)はありませんし、原作者も毎作違います。いや、原作ものかオリジナルかすら関係がないわけ!
 ところが3〜4年に1本渾身の劇場アニメを作る監督さんは「ストーリー上通りすがりなキャラ」を描いてる時間(尺)がないのでは? と。やっぱり、コンテでも作画でも、たくさん描く事で生まれるドラマってあるんですよ! 出崎作品は観るたびにそう思い、まだまだコンテを切りたくなるんです(汗)。

 そして、

『うさかめ』最終話(BD特典も含む)まで
カッティング(編集)とアフレコ終了しました!

 この週末にはダビングも全話終了します! 順調! あとは社内の演出・作画スタッフを信頼して、たまにアドバイスをするだけです。きっと皆、いい仕事をしてくれる事でしょう。この『うさかめ』は『てーきゅう』や今やってる『ベルセルク』のように自前コンテは1本もありません。だから、どんな画が上がってくるのか? 多少の心配はありつつもとても楽しみでもあるんです。音響演出してても、自分の予想外のところに役者さんの台詞が入る計算になってて(もちろんカッティング時に確認済みなんですが、それでも自分で切ったコンテと若干のズレは生じます)、現場で少々ズラしてもらったりと、そんなアドリブ感も作品全体の雰囲気に寄与してるのかも知れません。あ、そうそう、

アース・スタードリームの面々も回を増すごとに巧くなってます!!

 そんなアフレコ模様はまた今度! コンテに戻ります。