COLUMN

57 「原口正宏アニメ講義」は次回が最終回です

 昨日「第113回アニメスタイルイベント 原口正宏アニメ講義vol.11 『アルプスの少女ハイジ』がアニメ史に残したもの」を開催した。国産商業アニメ研究の第一人者であるデータ原口こと原口正宏を迎えたトークイベントシリーズの第11回だ。
 イベント前半のテーマは、今回のタイトルとなっている『アルプスの少女ハイジ』について。原口さんは「人々の生活描写(衣食住)を丹念に、生き生きと描くTVアニメの確立」「TVアニメの質的向上を生んだ制作システム上の挑戦」「名作児童文学をTV路線として定着、流行させた」「『ハイジ』が作られた時代背景」の4ブロックに分けてトークを展開。企画経緯やスタッフの動きから、アニメーション作品としての新しさ、その後に与えた影響など、近年になって初めて分かった最新情報も取り入れて、みっちりと語ってもらった。
 『ハイジ』についての主な話は、予定した90分内でまとまったのだが、東映長編のレイアウト(背景原図)について作画スタッフと美術スタッフのどちらがイニシアチブをとったのかという本筋から外れた話が膨らんでしまい、10分ほど時間が超過。それでも出演者が熱中してタイムオーバーをする事が多い「原口正宏アニメ講義」としては、予定通りに進んだ方だ。

 なお、以上の部分は2016年4月17日(日)23時59分まで、アニメスタイルチャンネルでタイムシフトで視聴する事ができる。詳しくは以下のページをどうぞ。

アニメスタイルチャンネル
http://ch.nicovideo.jp/animestyle

 ネット配信のないイベント後半では、僕と原口さんが「シャフトと京都アニメーション」についてざっくばらんな調子で語り合った。シャフトと京都アニメーションの作風の違いに、かつての虫プロと東映動画の関係を見出せるのではないか、という発想は僕にとっても新鮮なものだった。さらにイベント終盤では、TAAF2016で功労賞受賞をきっかけに『白蛇伝』に構成美術の役職で参加した橋本潔の仕事について、原口さんに語ってもらった。1970年代の作品について語った後に、現代の話題となり、1950年代に遡っていく。その時代の飛び方が、過去から現在までのアニメに精通している原口さんのイベントらしいとも言えるだろう。
 
 ⋯⋯といったかたちで回を重ねてきた「原口正宏アニメ講義」だが、6月12日(日)に開催する「vol.12」で最終回を迎える事となった。終了する理由は、イベントとしての集客が芳しくなくなってきたという、いたってシンプルなものだ。企画がルーティンなものになりすぎていたのかもしれないし、隔月の開催はいくらなんでもペースが速すぎたのかもしれない。イベントの主催としては、そういった反省はある。ネット配信を始めたのも、集客が減った理由のひとつであるはずだ。
 僕は、原口正宏という人の仕事を、あるいはその知識や見識を大勢の人に伝えたいと思っている。だから、コンセプトを変えて、原口さんのイベントを続けていきたい。ではあるが、とにかく「原口正宏アニメ講義」は次回で最終回だ。皆さま、引き続き、応援をよろしくお願いします。(2016/04/11)