COLUMN

第411回 まさに、凄いアニメ!

高畑勳監督作品『かぐや姫の物語』を観ました!

 劇場で観たかったんですが公開当時忙しくて、今回TV(某ロードショー番組)で。自分の中で高畑勳監督作品ベストは『じゃりン子チエ』(1981年)なんだけど、それ以外の作品もかなり好きなアニメであり映画である事は間違いありません。よく宮崎駿監督と並べて語られがちですが、90年代以降のお二人の作品はそれぞれまったく別の味わいだし、方法論はもとより、その表現手段が「アニメーション」である必然性(?)とかもまったく違う考えなのではないかと思います。子どもから大人まで無条件で観やすい宮崎アニメに対し、高畑アニメは自身が画を描かれないぶん「アニメでこんな事描いたら面白いんじゃないでしょうか?」的フロンティア精神が先に感じられるんです。実は他のどの監督よりも「アニメーションに夢を抱いている」人が高畑さんなのではないか? と。例えば『太陽の王子ホルスの大冒険』(1968年)の狼との格闘や少女ヒルダの芝居なども、当時のどのアニメよりも群を抜いた描写力で、『アルプスの少女はハイジ』(1974年)もTVシリーズのシンプルな線の数で本当に美味しそうなチーズを表現し、『火垂の墓』(1988年)や『おもひでぽろぽろ』(1991年)で、あえてセルアニメの限界に挑戦したのでは? と思うほど実写以上にリアルな映像に拘ったかと思えば、動く水彩画『ホーホケキョ となりの山田くん』(1999年)を実現し、そして『かぐや姫の物語』(2013年)! まさに高畑勳監督作品の集大成だと思いました! まるで黒澤明監督の「まあだだよ」(1993年)のよう!

かつてあれほど美しいアニメーションがあったでしょうか!?

 正直1999年は「なんでいしいひさいち原作の『山田くん』で動く水彩画なの?」と思ったのですが、今回のは「美しい水彩画調のアニメーションで描く『かぐや姫』」に納得がいきました。うん、これは「描くドラマと表現手段」が間違いなく合ってると思います! 今の深夜アニメみたいな美少女でこの話を描いたら感動するでしょうか? いや、たぶん他の宮崎・ジブリ系のキャラでやったとしても、少女の成長や感情表現がこれほどまでに豊かに成り得なかったと思います。これは暖かい鉛筆タッチに淡い色彩だからこそシーン毎・カット毎でそれぞれの内容に合わせた緩急ある描写が可能なのでしょう。そのくらい、芝居や動きすべてに清潔感が漂ってて「いつまでも観てたい、全カット!」と思いました。
 お話は、思った以上に「かぐや姫」でした。本当に月に帰っちゃうんだもん(あたりまえか!)。ネットでは何やら「罪と罰」がどうしたこうした言われてたようですが、自分はそこはあんま気にならなかったです。

……げっ!