COLUMN

第405回 画が動くって

 最近、新人の原画指導をしてて、こーゆー事言うと「お前アニメーターとしてどうよ?」と怒られそうですが、切に思うのです。

「画が動く」ってそんなに面白いのでしょうか?

と。いや、もちろんそれを生業とするわれわれはそれを言ったら始まらないでしょうし、少なくとも自分はそこに活路を見出して作品を作ってます。でも視聴者の方々が皆「画が動いてる」だけで喜ぶはずがあるわけないでしょう! って話。それこそ50年前にアニメーションを観た方は「画が動いてる、スゲー!」と感動もしたはずですが、果たして現代の若者である20代の新人アニメーターの中で「動く画を観て歓喜した原体験」を持ってる人、何人いるんでしょうか? だって白状すると俺自身でも「画が動くだけ」で満足した原体験などありません。『未来少年コナン』だって『宝島』だってあくまで、

「画で語ったドラマ」だから感動したのであって
「画が動くだけ」で感動したのではない!

んです。例えば『幻魔大戦』(1983年/りんたろう監督作品)を観たのは小学生の頃でしたが、映画が面白いかどうかより、なんと言うか不思議な違和感が立ちこめてきてなりませんでした。「あれ? 俺わくわくしてない!」と感じたんです。もちろん歴史に名を残すスーパーアニメーターの方々(もちろん当時はお名前も存じ上げませんでしたが)の作画競演であり「アニメ・ショー」! 面白くないはずがない! でも、俺はドキドキわくわくしなかったんです。スタッフの方たちのテンションはなんとなく感じました。だって「その辺の物が超能力で飛ぶ! 面白いでしょ?」な描き方・撮り方でしたから、そのくらいは感じたんです。でも「すみません、自分はそれほど楽しく思えませんでした」と。同じ事が『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994年/高畑勳監督作品)の「妖怪大作戦」の件にも言えます。これは映画が面白い面白くないの話ではありません!

アニメーション(動く画)の表現自体の面白さをどこまで信じてるのか?

の話です。両作品の監督はじめ他のスタッフの方々の世代でなら「画が動くなんてとても素晴らしく面白い!」と思われたのでしょうが、われわれTVアニメで育った世代は子どもの頃すでに「画が動く? あたりまえじゃん!」になってたんです。作り手と観る側のテンションのギャップはいつの時代でもあるのが基本中の基本で、さらにその「画が動くだけでは面白がれない世代」の俺らが作り手になって後進の育成にあたる、難しくないわけありません! だって俺たち以上にCGやゲームなどで

「動く映像」を見慣れた若者に
「キャラクターの動かし方」を教えなければならないのです!

から。そりゃもういつもテンション空回りです。

 でも、しょうがないです。自分も20代前半そーやって教わったので。もしかすると友永和秀師匠もそんな感じだったのかも〜と思いつつ、自分も「アニメの本当の面白さ」を教えようとギャーギャーわめいてます。

 で、「本当にアニメの魅力は動きなのか」の問いかけに対する答えが『てーきゅう』である、と結構マジで取り組んでたりします。