COLUMN

第403回 宮崎駿監督作品集

「宮崎駿監督作品集」(BD-BOX)、まだ全部観れてません!
特典の『ユキの太陽』(パイロットフィルム)は観ましたよ!

 あちこちの宮崎監督の特集記事でタイトルと「パイロット制作」などの記載は見てたので、「ようやく観れる!」という事で、実際このBOXを買って真っ先に観たのがコレでした。俺自身、

ちばてつや先生の大ファン!!

で、しかも「宮崎さんの演出・作画」! 興味を持つなという方が無理でしょ! 約5分の短尺ながら1972年当時のAプロダクション(現・シンエイ動画)らしいフィルムだな〜って印象。さらにちばキャラが宮崎画になってる妙。とても微笑ましく可愛い作品でした。
 あと、宮崎コンテの『赤銅鈴之助』(#26、27、41)も特典で収録——ですが、こちらは実は自分『赤銅鈴之助』のDVD-BOXを持ってるのでさして嬉しい特典ではないと思って油断してたら、

オープニングの真空斬りが動画で復活!!

してて大喜びでした。前述のDVD-BOX版の方は「制作・東京ムービー」のクレジットを現在の「トムス・エンタテインメント」にするためか、本来のオープニングのラストにあった真空斬りが別の止め画(しかもかなり雑なフリーズ画面)に差し替えられており、TVで観てたのと違ってて(もちろん世代的に再放送ですが)大変ガッカリしてたんです。それが本来の動画でクレジットも「東京ムービー」に戻ってたわけ。これは嬉しかったです! もちろん本編も宮崎テイスト満載で面白い!
 でも恐らくですが、自分は全部のディスクを観ないのではないでしょうか? それは別に「すでにDVDで何回も観たからな〜」的な理由ではなく、そもそも今回BOXを買ったのが「繰り返し観て楽しむ」目的ではないからです。じゃ、その目的は? と訊かれると、

個人的な90年代アニメに対する決着!

のためとでも申しますか、90年代にアニメを「映画の格」に持ち上げた偉大な宮崎作品に対する敬意を表しつつも「自分にはこんな凄い作品を一生作れるわけがない!」というコンプレックスに決別しようと思ったからです。これはだいぶ以前も書いたと思うんですが、日本のアニメって90年代のジブリの宮崎・高畑(勳)監督作品とI.Gの押井守監督作品でマンガから映画になった(んだと思う)のです。そしてその当時、自分の同年代の友人らと「アニメと映画」について議論すると必ず出る名前が「宮崎・高畑・押井」で、よく朝まで語り合い

アニメと言えどレンズを意識したレイアウト、
映画の「間」が必要なのだ!

と。よって

80年代のTVアニメ的ハッタリ・ケレン(味)演出(3回PANや止めハーモニー)は
映画じゃないし、ダサい!

と言われ、自分もそれを論破する持論も展開できず、とりあえずは納得してました。特に80年代はマンガやドラマにおいても「熱血」云々は「クサい!」「ダサい!」などと言われ、「カッコわるい」と位置付けられたため、90年代に入ると

汗臭くない事がカッコよく、ロジカルな事こそが映画の本質

的な風潮になり、自分は自分なりの答えも出せないままアニメ業界に入ったんです。で、かれこれ20年。まだ自分が目指す答えが見つからないままも、

とにかく前進するしかない!

ので監督やってるのですが、最近頭のわるい自分もようやくこれだけは分かってきました。つまり、

90年代のアニメにおける映画観論争は間違ってはいないが
「今もアレがすべてだ」と言ってるヤツは間違ってる!
さらに「アニメが映画である必要」すらあるのか?

と。その90年代「アニメ映画監督」の代表格である宮崎作品を手元に置いておく事で、もっと言うとそれを観なくなって忘れる事で90年代のわだかまりを払拭し、自分なりに「映画ではなくアニメの可能性」を追って作品を作りたいんです。

で、次は高畑勳監督のか