COLUMN

026 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』が放映される(2014年9月4日)

 明日、日本テレビ系列の「金曜ロードSHOW!」枠で『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』が放映される。これで初めて『Q』を観る視聴者もいることだろう。
 公式サイトなどでアナウンスされているタイトルは「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q TV版+巨神兵東京に現わる 劇場版 TV版」。オンエアにあたって映像などを微調整したものに、わざわざ「TV版」とタイトルをつけてしまうあたりが『エヴァ』らしいこだわりだ。なお、ここで『ヱヴァ』らしいと書かずに、『エヴァ』らしいと書くのは僕のこだわりである。つまり、誤記ではない。「巨神兵東京に現わる」は、ロードショー時にも『Q』の併映となった特撮短編映画だ。「館長 庵野秀明 特撮博物館」で上映されたのが「巨神兵東京に現わる」。『Q』の併映が、それに手を加えた「巨神兵東京に現わる 劇場版」。明日放映されるのは「劇場版」にさらに手を加えたものなので「巨神兵東京に現わる 劇場 TV版」になるのだろう。「新劇場版」の「TV版」も面白いが、「劇場版 TV版」はそれに輪を掛けてユニークなタイトルだ。あのスタッフたちらしいネーミングである。
 『Q』は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』に続く、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の第3弾だ。『Q』を観て、多くの観客が唖然としたはずだ。理由はいくつかある。内容が驚くべきものだったのは言うまでもない。だが、それだけでない。この作品は公開前から、そして、恐るべきことに公開後も、内容についての情報が伏せられていた。その徹底ぶりは、まるで特務機関NERVの遣り口のようだった。
 ファンはどんな内容なのかを知らずに劇場に足を運び、驚愕した。今回のTV放映でもそうだ。前週の同じ枠で『破』がオンエアされたのだが、そのラストについた予告も『Q』の仕掛けが分からない構成になっていた。「金曜ロードSHOW!」の公式サイトにも、具体的なあらすじは一切書かれていない。『エヴァ』風に言えば、今回の放映でも、事実は巧妙に隠蔽されている。
 『序』は物語の導入部で、『破』は痛快娯楽作だった。それに対して『Q』は作家性と尖鋭さが全面に出た作品である。『エヴァ』のオリジナルであるTVシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』も同じだった。序盤と中盤は作家性や尖鋭さを孕みつつも、娯楽作品として展開した。ミサトが予告ナレーションで言っていたように、中盤までは「サービスサービス!」をしていたわけだ。
 次回作『シン・ヱヴァンゲリヲン劇場版:||』が制作中であるため、現在は断言できないが、「娯楽作」から「作家の作品」に転じて完結に向かうという構成は、20世紀の『新世紀エヴァンゲリオン』も、21世紀の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』も同じなのだろう(『シン・ヱヴァンゲリヲン劇場版:||』で、またどんでん返しをくらう可能性はある。なにしろ『エヴァ』だ)。いずれにしても「娯楽作」から「作家の作品」への振り幅は『新世紀エヴァンゲリオン』よりも『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の方が大きかった。
 驚くような内容だと言われて身構えて観ても、それでも『Q』には驚かされるだろう。初見の方々、お楽しみに。

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