COLUMN

第361回 Wake Up, 板垣!(2)

「板垣さんが1本やってくれる」って山本監督がおっしゃってるんですが

とのタツノコプロ様よりの依頼に身を起こし答えました。

 本当に申し訳ないのですが、今回は「コンテまで」で! 本来なら処理(演出)までやりたいところですが、自分の監督作があるのでお引き受けできませんでした(やはり先に受けた仕事に迷惑かけられませんから)。で、『Wake Up, Girls!』劇場+1〜9話までのシナリオ(脚本)を読みました。

面白かったです!

「アイドルアニメ」というか「アイドルにかけた青春もの」っぽくて、普通のドラマとして広い層の視聴者が楽しめる内容に思え、個人的にはとても好感が持てました。一緒に飲んだ時「他のアイドルアニメとの区別化(WUGの独自性)は?」と尋ねたところ、ヤマカンさんは「あえて考えないようにしてる」と言ってました。たぶんそれは「コレはあのアイドルアニメと重なるからダメ、アレはあっちと被るのでNG!」と消去法でネタの選別をするのではなく、単純に自分が面白いと思うドラマを素直に作るって事だと思うし、WUGはそれがよかったのだと思います。
 で、俺担当の10話。これはホン(脚本)を読んだ時、正直「この話難しいな」と。だってこれ早い話『フラガール』(2006年/李相日)でしょ。母親が娘の頑張ってる姿を見て無条件で感涙——アニメだといちばん難しいんです。なぜならアニメのキャラは実在の俳優を撮った時に映る「血肉」がないからです。『フラガール』は、ただ踊りだけで感動するのではなく「ああ、この女優さんたち相当踊りのレッスン積んだんだな〜」とその成果を見せられて理屈抜きで否応なく感動させられるんです。そーゆーメタ的要素で感動させることができるのが実写の強みで、S・スタローンやジャッキー・チェンのアクションも同様で、あれアニメで描写しても、もはや普通の事でしょう。ダンスだって「よく作画したな、頑張ったなスタッフ!」で感動してくれるのは作画マニアさんであって、そうでない視聴者さんはそこで感涙してくれる保証はありません。だから自分はホン読み(シナリオ打ち合わせ)の時、必ず言うのが

勝ち負けは絶対にシナリオで理屈をつけてください! 実写映画みたいに俳優さんの頑張り・努力・我慢大会でお客さんが感動する事はアニメではありません。ちゃんと「コイツはアイツより○○が優るから勝てたのだ」をシナリオ上でしっかり構成してください。決して「10分間の死闘の末、アイツが勝利した」とか書かないように!

なので、WUGの10話は困ったんです。だって「ダンスで無条件に感涙させなきゃならない」構成だから。別に上記のやり方はあくまで「板垣は〜」であって、もちろん「ヤマカンさんのやり方」はそれはそれでありなのです。否定するつもりはまったくありません。監督にはそれぞれの作り方があり、各話のコンテ・演出スタッフは、それに合わせるしかないので——つまり、困ったなと。