SPECIAL

吉川俊夫 制作デスク インタビュー
第1回 田辺修カラーを貫くために

 天才アニメーター・田辺修のタッチを全編に活かした映像は『かぐや姫の物語』の大きな見どころのひとつ。だが、それを実現するためには途方もない苦労と、気の遠くなるような歳月が費やされた。制作デスクとして様々な困難と戦ってきた吉川俊夫に、参加アニメーターの仕事や、貴重な現場でのエピソードなどを語ってもらった。

PROFILE

吉川俊夫(Yoshikawa Toshio)

1980年3月27日、福岡県生まれ。千葉県育ち。ジブリ美術館でのアルバイト勤務を経て、トムス・エンタテインメントに入社。2009年にスタジオジブリへ。『借りぐらしのアリエッティ』『コクリコ坂から』で制作デスクをつとめ、『かぐや姫の物語』に参加。

取材日/2013年11月28日 | 取材場所/東京・スタジオジブリ第7スタジオ | 取材/小黒祐一郎 | テキスト構成/岡本敦史

── 吉川さんが最初に『かぐや姫』の企画に関わることになったのは、どのタイミングなんですか。

吉川 最初の接点は、自分がジブリに入る前ですね。『かぐや姫』はフリーの集団で作ることになるだろうから、ジブリに入ったら『かぐや姫』の担当になってもらうかもしれない……という説明を、当時の制作部のトップだった方から受けました。

── フリーの集団というのは、ジブリの社内ではなく、外部のアニメーターさんを呼んできて作るという意味ですね。

吉川 そうです。だから、外の会社で制作経験のある人間が、外部からスタッフを集めて作る可能性が高い、とは聞いていました。でも、実際には『(借りぐらしの)アリエッティ』を担当することになったんです。

── 吉川さんが本格的に『かぐや姫』に参加されたときは、どんな状況だったんですか。

吉川 PVが完成して半年経った頃で、ようやく実制作に入り始めたぐらいのタイミングでしたね。小西(賢一)さんが参加して、キャラ表ができたあたりで、まだ作画さんも5人ぐらいしかいなくて。

── そのときにいらしたアニメーターさんは、どなたなんですか。

吉川 安藤(雅司)さん、橋本(晋治)さん、松本(憲生)さん、濱田(高行)さん、佐々木(美和)さんです。

── その5人の方たちは、どのように集められたんですか。

吉川 田辺さんや西村さんが口説きに行ったと聞いています。

── 作画の初期メンバーは、その5人なんですね。

吉川 そうですね。そこから、さすがに少しづつは人を増やしていこうという話になり、コンテも100ページぐらいできていたので、作画INできるところはしていきましょうと。2012年からは現場の規模を大きくして、この第7スタジオでやっていこうという話になっていたので、そこに合わせて作画スタッフを強化していきました。2011年の10月には秦(綾子)さんという方に入ってもらったり、それから年末にかけていろんな人に声をかけて、順次合流し始めて。年明けには『ドラえもん』の劇場(『映画 ドラえもん のび太と奇跡の島 アニマルアドベンチャー』)が終わるから、そのメンバーにも声をかけたり。

── 制作デスクとしての仕事は、主に現場を回すことと、人を集めることですよね。

吉川 はい。

── 吉川さんが中心となってアニメーターを集めたり、進行していった?

吉川 いや、元々もう1人、たくさんアニメーターさんのことを知っている制作がいたので、その子と2人でやっていました。

── 人選はどんなかたちで?

吉川 人選は……正直に言うと、あまりクセがない人(笑)。あと、なるべく素直な人。そこが大きな基準になりましたかね。

── 「クセがない」というのは画に関してですよね。「素直」というのは、人柄?

吉川 人柄ですね。というのは、やっぱり田辺さんと高畑さんが強烈な個性の持ち主ですし、特に田辺さんの画のタッチを再現するということを考えたら、それにちゃんと沿ってくれるであろう人ということを第一に考えました。そうはいっても、そこまで作画さん全員のキャラを知っていたわけではないですけどね。

── 暴れん坊みたいなイメージのある方も、多少は参加されていますよね。

吉川 いや、そういう人はあまりいなかったんじゃないかな……。

── 西田達三さんとかは暴れん坊じゃないんですか。

吉川 全然! まったくそんな感じではなかったです。「結構、器用に合わせてくれるよ」とも聞いていたので、『かぐや』にも入っていただきました。

── 西田さんはどこを描かれたんですか?

吉川 いちばん大きなところは、ラストで月の人たちがワーッとやってくる場面ですね。

── ああ、あれは西田さんなんですか!

吉川 あそこはかなり大量にやってもらっています。助かりました。Z-Bセルとかまでのカットもあったのに……。

── クセ者とか暴れん坊とは言わないまでも、個性派と呼ばれるような方も中にはいますよね。

吉川 やっぱり、そういう方はべらぼうにうまいので、うまい人に入ってもらえると田辺さんも楽になるとは言っていましたから。

── 田辺さんが「この方がいれば」とおっしゃったのは、どなたなんですか。

吉川 たとえば、森田(宏幸)さんは最初から指名されてましたね。

── 浜洲英喜さんとか、大塚伸治さんも?

吉川 浜洲さんや大塚さんは、いつもジブリの4スタにいらっしゃる方々ですから。ただ、お2人とも『かぐや姫』の作業が終わるとは思ってくれていなかったので(笑)、終わりが見えてからじゃないと参加してくれ無さそうな感じでしたね。なので『風立ちぬ』が終わってから、終盤に1シーンずつやっていただきました。

── 具体的には、どこをやってるんですか。

吉川 浜洲さんは、姫がイノシシに襲われて捨丸に助けられたあと、子供たちと歌いながら行進しているシーンですね。で、崖のところで姫が独唱して、みんなが帰っていくまで。

── ああ、なるほど。

吉川 大塚さんは、森の中で雉を追いかけて、捨丸が崖から落ちるところまでです。

── 雉が飛んで、逃げていくところも大塚さん?

吉川 そうです。

── 雉の動きや、捨丸の走りといったアクションは、大塚さんが作られているんですか。

吉川 基本的にはそうですね。最初はフルコマで動きを描いてこられたんですけど、高畑さんや田辺さんが「ここはフルコマじゃなくていいです」と言って、紙の上でやりとりしながら作っていました。

── 作画の中心メンバーは、どんな分担でやっていたんですか。

吉川 翁と媼が出てくるところは、ほぼ山口(明子)さんですね。

── え、あんなに出てるのに!?

吉川 山口さんの担当カットは100を超えていますし、翁と媼の2人が同じ画面内にいるところは、かなりの率で山口さんですよ。

── 序盤で、かぐや姫が媼の手の中でみるみる大きくなっていくところも、山口さん?

吉川 そうです。

── あそこは、田辺さんの手が相当入ってるんですか。

吉川 コンテ段階で設計が細かく描かれていたので、山口さん曰く、基本的にはコンテをそのまま再現するつもりで、そのコマとコマの間を埋めていく感じで上げていったと。そこにまた田辺さんが味つけしていく、というようなキャッチボールでしたね。

── かなり時間がかかったんですか。

吉川 レイアウトを戻すまでには時間がかかりましたけど、作業自体はそんなに。山口さんは、田辺さんとの仕事にはあまり苦労は感じなかったみたいです。僕はもう少し引っ張るだろうと思ってたんですけど、意外とすんなり上がりましたね。そのあとのシーンで、翁の「ひーめ、おいで!」のカットも、田辺さんのレイアウト戻しに時間がかかりました。

── 「ひーめ、おいで!」のカットは、どなたが描かれたんですか。

吉川 あそこは濱田さんです。赤ちゃんが這い這いし始めるところから、翁が姫を抱いてブチュッと口づけするまでのくだりは、ずっと濱田さんですね。

── 赤ちゃんの這い這いの動きは、もちろん田辺さんがガッツリ手を入れてるんですよね。

吉川 相当入ってますね。濱田さん含め、赤ちゃんの動きについては、かなり研究されてましたから。YouTubeで赤ちゃんの映像を見たり、濱田さんのお子さんとか、高畑さんのお孫さんのビデオを持ってきて見たりしていました。子育て経験のある人が見ると、ものすごくリアルに感じるらしいですけど、それは田辺さんと濱田さんの研究の成果でしょうね。

── 田辺さん、YouTubeを見たりするんですね。

吉川 いや、あの人にインターネットを見られる環境を与えちゃいけないんですよ。放っておくと1日中ネット見てますから。

── やはり、主に動画を?

吉川 延々と動画を見ていたり、何かを検索していたり、メールをしてたり。ある日、とうとうネット禁止令が出てましたね(笑)。あとは、After Effects禁止令も。田辺さんのアカウントではソフトが立ち上がらないようにできないかとか、システム管理部に相談したり、いろいろ制限をかけてました。

── 濱田さんは、翁・媼のほかにどこか描かれてるんですか。

吉川 山の子供たちの活き活きとした姿は、濱田さんにたくさん描いてもらっています。あとは、イノシシと遭遇する場面とか。

── あれも濱田さんなんですか。あのウリ坊たちの動きも、田辺さんの修正が相当入っている?

吉川 田辺さんの修正、入ってますね。レイアウト段階でかなり細かくセルを分けて「こういうふうにやりたい」という指示書きを入れてきて、そういうのを見るたびに監督助手から悲鳴が上がってました(笑)。そのレイアウト修正を作画さんに戻す前に、制作としては「これをこのまま戻していいのか?」というところでまず悩むわけです。この状態で戻したって、できるはずがない。こんな撒き方をしていたら、作業的に無理が生じるのは明らかなので、こうしたらどうですか? という提案をこちらから田辺さんにしてみたり。そういう段階を踏んでから原画さんに戻すという作業も、監督助手と制作の業務の一環でしたね。

── ほかにも、そういう場面がたくさんあったんですか。

吉川 ええ、大量に。

── なるほど(笑)。で、橋本さんが担当したのは、予告編で話題にもなった姫の疾走シーンですよね。

吉川 そうです。

── それ以外では、どこを描かれているんですか。

吉川 あとは、シーン11のお花見に行くところですね。

── ああ、そうなんですか。作品のキーになるところを担当されているんですね。桜の樹の下で、姫がくるくる回るところも橋本さん?

吉川 そうです。お花見シーンの一連と、そのあと都に戻ってきて、盗みをした捨丸と姫が再会するところまでが橋本さんです。

── あ、そんなところまで。

吉川 あとは、後半の姫と捨丸の飛翔シーン。あそこは飛んだ瞬間から橋本さんですね。

── 屋敷に招き入れられた求婚者たちが、姫の前でドタバタするところは?

吉川 あそこは森田さんですね。5人が屋敷に来て、追い払われるまでのくだりは、清書を別の人にやってもらったりもしていますが、基本は森田さんです。

── 5人の求婚者がそれぞれ財宝を取りに行くシークエンスのなかで、嵐の海に竜が出てくる場面は、どなたが担当されているんですか。

吉川 基本的には、全部のレイアウトを森田さんに描いてもらっています。そのあと、原画まで森田さん1人でやってもらう時間はなかったので、前半は森田さん、後半は別の人に分けまくってます。

── あそこだけ、ちょっと作画のトーンが違いますよね。

吉川 でも、基本的には田辺さんの画ですよ。波の描き方にしても、森田さんが作打ちに来たときに「どう描けばいいか分からないから、田辺君、波を描いてよ」と言って、その場で描いてもらったりしてました。

── あ、そうなんですか。

吉川 そのあと、田辺さんが夜中に突然思いついた波とか雷の描き方を、僕がスキャンして森田さんにメールで送ったりもしました。そういうやりとりをしながら、田辺さんと森田さんで作っていったシーンですね。

── 橋本さんが担当した姫の疾走シーンは、どんなふうに設計されているんですか。

吉川 あのシーンは、僕が参加する前に完成していたんです。だから、どんなやりとりであの映像ができたのか、よく知らないんですよね。(西村プロデューサーに)何か特殊なやりとりがあったんですか?

西村 あそこは演出も含めて、橋本さんにお願いしたんです。コンテは一応あったんですが、それをどうやってうまく映像化するかに関しては、橋本さんに丸投げしたかたちですね。着物がぶわっ! と舞うところなんかは、元々のコンテにさらに追加した要素ですし、姫の表情が一瞬ごとにバババババッと変わる寄りのカットも、橋本さんの発明ですね。あれは阿修羅像にしてほしい、憎しみや悲しみがないまぜになった顔にしてほしいという高畑さんの要望があったんです。それを橋本さんは、コマごとに表情を変えるという手法で表現した。すごい発明でしたね。

── コンテの基本設計は田辺さんだけど、橋本さんが膨らませた部分も大きい?

西村 大きいですね。姫が走り出す前、線のブレで姫の感情を表すところも橋本さんのアイデアです。

吉川 あと、あのシーンは部分的に動画を橋本さんが水彩画でやっているんですよ。

── え? 動画自体が水彩画なんですか。

吉川 そうです。まず、画用紙に実線の作画をコピーする。その上に水彩絵の具で色を塗ったり、影をつけたりして動画にしてるんです。

── そのあと、スキャンしてデータ化していく?

吉川 そうです。ただ、そんなことを全編にわたってやっていると時間も手間もかかるし、田辺さんのほかの作業もできなくなるわけです。結局、画用紙の動画に色を塗るのも、基本的には田辺さんがやるしかないですから。

── なるほど……限りなく個人制作アニメに近づいていくわけですね。

吉川 PVの制作時には、そんな作り方をしていたんです。その名残で、本編の制作が本格的に進んでいる最中にも、田辺さんが突然「ここは水彩でやりたい」と言い出すカットが出てくるんです。

── 動画を?

吉川 ええ、カット単位ですけど。そのカットをよくするためには、水彩で描くのがいちばんいいと考えて田辺さんは提案するんですけど、全体の統一感を考えたら成立しないじゃないですか。大体、そんなことを始めたら終わるわけがない。それで西村さんが「田辺さんが水彩って言い出したら止めるから、まず俺に言え」と。そんな感じで、水彩はNGという方向性がやっと決まって。

── でも、田辺さんとしては水彩でやりたいんですね。

吉川 ええ。どんなにNGだと言っても、田辺さんは毎回忘れたふりをするのか「これ水彩で」と言ってくる(笑)。まずは「ムリです」と突っぱねて、それから現実的な落としどころを見つけて、実作業に入ってもらう……そんなやりとりの連続でしたね。

── たとえば、どんなところを水彩でやりたいと言っていたんですか。

吉川 翁が竹から出てきた布を持ち帰って、家の中で畳んでいるシーンの布を水彩にしたいとか、イノシシや牛や鳩を水彩でやりたいとか言っていましたね。

── それに対して、どうやって説得するんですか。

吉川 落としどころとして、1枚だけ水彩で作った素材をスキャンして、それをテクスチャーとして貼ったり、デジタル加工して動かしたり。そういうことは実際の本編でもやっています。

── 現状の完成画面でも、水彩画的な効果は十分に出ていると思うんですけど、田辺さんとしては満足いかないんですね。

吉川 いや、だから「こうすればちゃんと水彩っぽく見えますよ」という落としどころを提示した結果、あの完成画面になってるんです。

── あ、なるほど。

吉川 そういうやりとりを重ねて、なんとか水彩だけは避けてきたんです。鳥虫けもの含め、何か新しいキャラクターが出てくるたびに「水彩でやりたい」という案が必ず出てくるんですよね……。結果、部分的にはやりましたけどね。

── つまり、田辺さんは全カットに手を入れつつ、全カットに何かしら自分のアイデアを入れようとしていたわけですね。

吉川 そうですね。だから、田辺さんの入れた修正集は、田辺さんのアイデア集でもあるんです。「こういうセル構造にすれば、きっとこういう画面になるに違いない」とか。それが現実的であるかどうかは、要相談でしたけど(笑)。

── レイアウト集を拝見すると、ものすごく小さなフレームで描かれたものもありますよね。あれは、田辺さんがこのサイズで描きたいと指定するんですか?

吉川 作打ちをするとき、前もって田辺さんにフレーム指定をしてもらうんですよ。このカットは40、このカットは80という指定の一覧をもらったら、それに合わせてコンテを拡大して、それを見ながら打ち合わせするんです。

── で、担当アニメーターはそのフレームサイズに合わせて原画を描くと。

吉川 そうです。

── 線を太く見せたいところはフレームが小さくなる、ということなんですか。

吉川 ま、簡単に言えばそういうことだと認識していましたが……田辺さんとしては、もっと深い意図もあったんでしょうね。感情の起伏のあるカットは、もっと線のざわつきをよく見せたいから、そういうカットはフレームを小さくしてアップにしようとか。そういう演出意図もあってサイズを決めていたとは思います。ただ、どうしてここが40フレームなんだろう? と思うようなところもあるんですよ。そしたらレイアウト戻しのときに「200%拡大してください」という指示が入ってたりして(笑)。そういう気まぐれとしか思えないカットも多かったので、すべての意図は汲みきれてないですねえ……。

── 作画途中の修正で、サイズが変わったりするんですか。

吉川 はい。作画さんとしては「最初から言ってよ……」ということになりますよね。8割、9割のカットは、途中でサイズを変えてました。拡大するスタッフの身にもなってほしいですよね。監督助手がコピー機から数時間離れられないんですもん。

── じゃあ、ほとんどの場合、最初のレイアウトと作画をフィニッシュしたときでは、サイズが違ってるんですか。

吉川 ほぼ違います。だんだん思い出してイライラしてきました(苦笑)。最初はフレームサイズの記録を取っていたんですけど、もう途中からワケが分からなくなってきて。撮影さんに「このサイズになります」と伝えても、結局上がってみないことには分からないので、そういう記録作業もしなくなりましたね。

── 全体としては、普通のアニメより小さいサイズで作画しているんですよね。

吉川 そうです。ときたま、普段のジブリ作品の標準サイズである150フレームのカットもありましたけど、全体の1割に満たないんじゃないですかね。これはさすがに大きいサイズじゃないと描きづらいでしょう、という配慮で大きくしてくれたのかもしれませんが。

── 田辺さんのレイアウトには、芝居の動きまですべて書き込まれているわけではないんですか。

吉川 人によっては、ポイントの画だけ入れて、あとはお任せしますという場合もときたまありました。たとえば大塚さんとかは、動きに関してはある程度、委ねる感じでしたね。

── その一方、田辺さんがレイアウト段階でしっかり芝居を決め込んでしまうカットもあるわけですね。

吉川 あります。「これ、もうラフ原じゃん」みたいな状態のものもありました。これでシート打っちゃえば、もう動きは確定だろうという田辺さんのラフが大量に入っていたり。

── レイアウトといいつつ、一枚画+ラフ原のようなセットになっているわけですね。

吉川 そういう状態で戻された人は、とりあえず田辺さんの修正を噛み砕きながら間の画を埋めてみて、それをラフ原として再度チェックに出す。そしたら、また全修正というかたちで戻ってくる、みたいなことが頻発していました。「じゃあ、最初から自分で描けばいいじゃん!」って、作画さんは思いますよね(苦笑)。この一連の工程はなんだったんだ、と。

── その全修は、田辺さんが最初に入れたラフとも、また違ってるんですか。

吉川 もちろん違ってます。途中で動かし方を変えてくるんです。

── ああ、それは不条理だ。「さっきはこう描いたけど、やっぱりこうしましょう」みたいな?

吉川 さっきというか、半年前はこうだったけど、最終的にはこのかたちで……みたいな感じですかね。半年前とか1年前に描かれた原画も、ゴロゴロしてましたから。

●『かぐや姫の物語』公式サイト
http://kaguyahime-monogatari.jp/

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