COLUMN

第66回 立つんだジョー

 考証のこととかレイアウトのこととか、そんな話題に終始してるのは、まだしも気が楽だからだ。
 今は絵コンテを見直している。

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 かなり死にたい気分になれる。
 絵コンテ自体は2012年の秋にいったん終わりまでできあがっている。よくやる手なのだが、AパートからB、C、D……と振って、今回はFパートまで6冊分ある。1パートをテレビアニメ1本分くらいの尺にしておくと、なんとなく目安をつけやすい、ということなのだが、まあ総尺の感じも分かってしまおうというものだ。
 実は、2012年秋にはCパートまで各カットの秒数をつけて、そこで放り出してしまっていた。
 Aパートが230カットで1253秒、なんともTVシリーズのフォーマット的だ。
 Bパートは228カット、1297秒。うん、編集で切り落とす分を1割と見ればまあまあなところ。
 昔、台詞の多い『ちびまる子ちゃん』『あずきちゃん』なんかをやっていた頃には、約20分の1本あたり200カットくらいだったから、カット数から見えるペースとしてはそれなりにゆったりした感じにはなっているはず。
 Cパート、260カット、1556.5秒。……本気か? 26分もあるじゃん。
 ここでコンテを寝かせてしまった。レイアウトの作業だとかは進められるところは進めるのだけど、コンテ自体は寝かせてしまう。しばらく時間をおけば、切っていた頃よりもずっと客観的になっているはずだから、もっとうまいやり方が見つかるかも知れない、という思いもあって。
 さすがに、いつまでもそうもいってもおられず、欠番を出すなら出す、改訂すべきは改訂して尺を出してしまわなければならない時期になってしまった。
 尺入れには、コンテ1パートあたり1日かけるとして、一週間と見積もって取りかかった。1日もかけるのか? といわれればそうかもしれないのだけれど、必要な手直しも加えなければならず、その都度浦谷さんに回して絵の描き直し、切り張り、さらにはセリフの作り直し、いろいろと手がかかる部分はある。ということで、2月1日土曜日いっぱいには改訂稿絵コンテが完成するはずだったのだけれど、月曜日に大学の授業(年度の最終講義)があるのを計算に入れてなかった。週またぎになってしまうことになる。

 絵コンテ、というのはコンティニュイティというだけあって、1カットだけ眺めていても話にならない。連続させて頭の中に時間の流れを作って見直してみるのはよいことだ。コンテ用紙に絵を描き、ト書きやセリフを書き込んでいるあいだは、それこそ1カット1カット作りこんでゆくしかないのだけれど、ストップウォッチを手にして尺入れする段になると、時間の流れが見えてくる。これを10分くらいの分量をできるだけ連続して行うことで、映画自体の構成も実時間に即する感じで見えてくる。
絵コンテを撮影してビデオコンテなんか作ったりすることもあるようだが、自分自身についていえば、尺入れをする中で同じことができてしまうので、Vコンテは特には望まない。
脳内だけでならば、ここは本番のカットではこう変えようというところも保管できてしまうのだが、Vコンテだと、あとで直したくてたまらない部分をも物理的に存在させてしまうので、演出家としては「イメージが壊れる」ので「迷惑」といいたい気持ちにすらなる。時代劇映画の監督が、役者がジーパン履いてウロウロしてたりするとイメージ壊れるからやめて、というのと似たような感じなのだと思う。
テレビ・シリーズの仕事が今は苦手なのは、毎週毎週スケジュールに追いかけられることもあってしまうが、何より放送フォーマットぴったりに1コマでも多い少ないがあってはいけない、というのに体がついていかないからの部分がかなりある。形の上のことだけであと数コマどこを切るかで頭を絞り尽くす、というのは生産的なことなんだかなんだか。
さて、そんなのよりは前向きに臨もうではないか。

 Aパートからコンテを見直す作業に入る。尺が入らないままになっているのはD、E、Fパートなのだけれど、Aパートから見直すのは、「コンティニュイティだから」。
 1年以上おいて客観的に見てみるものではない。じゅうぶん欝になれる。こんなものだったか、と、死にたくなっている。思えば『アリーテ姫』でも『マイマイ新子』でも、作ってる最中は自分ではかなり欝なものだった。これはこれで十分観客に面白がってもらえるに違いないという算段あって、その上でのことだ。心の中に抱いていたものが形になって目で見えるようになるとどうしても味わう性質のものなのかもしれない。ならば、そういうところはできるだけ直す。そのために時間をおいたのだから。そう思って改訂を加えてゆく。
 結果、Aパートが2.5秒減(プラスマイナスした結果だから、減らしたばかりではない)、6カット減。
 Bパート、24秒減、1カット減。
 Cパートはなんと59秒減、15カット減。ここはちょっと大鉈を振るった。減らす方がよいと思ったところを積極的に減らした結果がこの数字。繰り返けれど、減らすだけでなく、思い直して足したところもちゃんとある。
 Dパート1333.0秒、234カット。これも、尺入れこそはじめてだが、逐次改訂を試みて、以前より4カット減っている。
 Eパートは今やってるところ。

 この数字を見せるべき人、プロデューサーに見せてみた。完成尺の動向について、今現在一番知りたがっている立場の人であるわけだし。ちなみに、プロデューサーは現状で数人立っていただいている。
 「なんかこう……『あしたのジョー』が減量してるみたいな……」
 涙ぐましい?
 この仕事は常にそうなのかもしれない。
 でもジョーならばまだまだ。力石の減量じゃないだけかなりマシ、と思おう。

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