COLUMN

第200回 『少女革命ウテナ』のこと その2

11月になったところで、来年の僕のお仕事がいくつか情報解禁になりました。
まずひとつめは『ウィッチクラフトワークス』。監督は水島努さん。J.C.STAFFの制作です。この作品での僕のクレジットは「ビジュアルコーディネート」。色彩設計から一歩踏み込んだ形で作品作りに取り組めるように、昨年から展開してる僕プロジェクトな肩書きです。これについてはそのウチここで書きますね。で、色彩設計は『夢喰いメリー』『さくら荘のペットな彼女』の石田美由紀さんです。
もうひとつは『Wake Up, Girls!』。監督はヤマカンさんこと山本寛監督。制作はタツノコ+ordet。山本監督とは『blossom』『宮河家の空腹』に続き3作目になります。こちらは色彩設計として参加中。『WUG』は仙台を皮切りに年末に公開される劇場用作品とTVシリーズ両方が稼働中。どちらも1月からオンエアスタートです。
そして佐藤順一監督のODA『絶滅危愚少女 Amazing Twins』。こちらも1月リリースですね。
そんな感じで頑張ってます! 乞うご期待! よろしくです。

さてさて。
幾原くん長谷川くんに続いて、金子くん、長濱くん、高橋くんがBE-PAPASスタジオに入り始めて、徐々に「少女革命ウテナ」現場は整っていきました。
僕はと言うと3週に一度くらい(?)の割合でスタジオに通ってました。僕の場合『ウテナ』に参加するといっても東映動画を辞めちゃうってコトではなくて、今までどおりに東映動画の仕事はフルにしつつ、週末、あるいは深夜とかに「ウテナ」関係の作業をする、という感じ。基本は自宅作業。少しずつ段階的にまとまった結果を持って、そんなペースで打ちあわせに通ってたワケです。
僕の作業はキャラクターの色のイメージを具体的にしていくこと。幾原くん長谷川くんとの打ちあわせで示された大まかな色のイメージとか、お話やキャラの設定づけに起因する色の縛りを把握した上で、具体的にキャラクター設定に色をつけていくわけです。
大抵のアニメーションのキャラクターの色作りの場合、キャラクターのデザインがOKになる→キャラクター設定を清書→色の作業に着手(セル画で色見本を作成)という段取りなんですが、「ウテナ」の場合は線画デザインを先に決め込まず、色も含めてデザインを決め込んでいこう、という考え方でした。
さいとうちほさんからのキャラ原案を基に長谷川くんが描き起こしていくわけなんですが、実はお話もまだカッチリとした決定稿ではなく、まだまだビミョウにブレている時期でありました。なので、キャラ設定の方向自体が固まりきっていなくて、キャラ設定もまだまだラフの段階なワケです。
なので、その段階のラフ設定に色をつけていくわけなんですが、この作業をどうしようかと。僕としては最初からセル絵の具使って色見本作って行くことはイヤだった。先にも書いたとおり、僕の場合、『ウテナ』は自宅作業だったので、まず自宅でセル彩色するのが超面倒。セル絵の具揃えたり、透過台やら乾燥棚やら、そんなあれこれをセッティングしなくちゃならないので、とにかく大ごと。しかも最初からセル絵の具で考え始めちゃうと絵の具の色数や種類に縛られちゃうことになって、発想に足かせつけちゃいかねない。さらには使うメーカーの絵の具の問題。スタックなのか太陽色彩なのか。まあ、東映作品じゃないからどう考えても太陽色彩なワケで、そうなるとその絵の具を僕が手元に持ってなかったり……などなど。
今だったら、じゃ線画をいったんパソコンに取り込んで……なんて感じで始めるところなんですが、時は西暦1995年。パーソナルコンピュータが徐々に映像、画像の分野でも使えるようになってはきたものの、手軽に画像取り込んで色を塗るとかはさすがにまだまだ一般化はほど遠い時代。アニメの現場の作業はまだまだセル画全盛のアナログ時代です。

で、どうしたか。
「コピック」というアルコール系カラーペンがありまして、それを使って紙の設定に色つけてイメージ起こしをやってました。まずちょっとイイ紙質のコピー用紙使ってキャラクター設定をコピーしておきます。それにコピック使って自分のイメージした配色にドンドン塗っていくわけです。まあ塗り絵ですね! これがね、イイんですよ! アルコール系のインクなので透明水彩のように重ね塗りができて、影つけにあわせて重ね塗りして強弱濃淡作れたりして、見た目、印刷したアニメセルの塗り見本に近い感じに仕上がるんですね。実はコピックが世に出て早々に画材店で見かけて即飛びつきまして、その前の年あたりから東映作品で色考える際にもずいぶん使っておりました。
とりあえずそのコピック、売ってる色を全色揃えましてガンガン色をつけていきました。とにかく叩き台ですから、1枚の設定画から何枚も何種類もカラースケッチを試しました。もう時効だろうから書いちゃいますが、実はその「ちょっとイイ紙質のコピー用紙」は東映動画でこっそりコピーしちゃってました(ああ、ごめんなさい(汗))。
その設定に色つけしたものを持ってBE-PAPASに行きます。それをスタジオの応接セットのテーブルに広げて、幾原くん長谷川くんはじめ、スタッフみんなで意見交換です。で、その場でハサミ使って、僕が色つけていった設定をチョキチョキ切ってコラージュです。髪の色はこっちで、服はこれ、でも服の塗り分けはこっちがイイかな? みたいな感じ。さらにはそれやりながら「この服、ここは線を足して塗り分けられるようにしてみようか?」とか、「肩の部分に何かひとつポイントになるものがあったほうがいいかも」とか、色と一緒にデザインもあわせて変更していきます。
そうやって出たアイデアを長谷川くんがあらたにラフ画に起こして、それにまた僕が同じように色つけて持っていって、またみんなで意見出して、結果、前のデザインに戻ったり(笑)。そんなやりとりを、何度も何度も繰り返していったわけです。そんな中で、冬芽の髪のメッシュや生徒会の制服の左右非対称な塗り分けが決まっていきました。

そんなやりとりを1995年から翌1996年にかけて続けていきました。その間僕は『DRAGON BALL』の劇場版に参加したり、『セーラームーン』の『S』とか『SS』とかの劇場版やったり、と相変わらず忙しく東映の仕事はあったわけで、その忙しい間は『ウテナ』の作業は止まっちゃうわけです。でも『ウテナ』の放送開始がいよいよ1997年春になりそうだ、と。そうなると、決め込み作業も一気に進めなければならなくなってくるのでした。

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