COLUMN

第40回 机を離れてばかりの1週間

2013年6月第3週末からの日程。

●6月14日(金曜日)

 宮崎駿さんの『風立ちぬ』がこの夏公開になるということで、主人公のモデルである堀越二郎絡みのムック本なんかがあちこちで企画されているのだが、そのうちの一冊に図版入りの原稿を書く羽目になっていて、著者校正の再校を送り返さなくてはならなくなっていて、どたばた。明日明後日は完全に時間が塞がるのでなんとかしてしまわなくちゃならない。データにして校正を送り返したら、数時間後に修正したものが送り返されてきて、またこれを見直さなくちゃならない。

●6月15日(土曜日)

 日本アニメーション学会第15回大会が母校日芸で開かれる。これは実行委員とシンポジウムの登壇者にならなければならなかった。夜は大学の学食で懇親会。

●6月16日(日曜日)

 学会大会の2日目。なんとも早い時刻に集合を指定されてしまったのだが、学科に着いてみると、昨日あんなにお客が来るなんて思いもしなかった、と2日目のシンポジウムに登壇する池田宏さんが、映像を作り直していた。今回の学会大会にしても、シンポジウムにしても、池田さんの段取り方は尋常ではなくって、喋ることが全部タイミング指定入りの台本になっていて、78歳にして発揮されるパワーの凄さを見せつけられてしまっている。
 終了後に、恩師・池田宏先生を教え子たちが囲む会。芸術学部映画学科内の専攻コースである「映像コース」を立ち上げる原動力となった池田さんを、当日集まった同窓生で囲んで、ということだったのだが、最年長がコースの1期生で、以下自己紹介で「何期生の誰々です」と名乗るのだけれど、思えば自分が何期生なのか全く考えたこともなかった。自己紹介が自分の番に回ってくるまで、頭の中で数えに数え、どうも8期生らしいと思い至った。卒業以来30年経ってようやくこれだ。

●6月17日(月曜日)

 午前9時55分から、前日前々日と同じ江古田校舎で3、4年生向け授業。月岡貞夫さんの「アニメーションI」が具体的な表現技術を扱っているので、自分の受け持ちである「アニメーションII」ではちょっと違うことをしなければ、と、毎回悪戦苦闘している。元々「アニメーションII」は高畑勲さんが講師をするコマだったのだが、数年前、高畑さんが『かぐや姫の物語』の制作に入るために、非常勤講師の定年まであと1年を残して早々に退いていってしまったので、あとを引き受けなくてはならなくなっている。自分だって仕事があるのだけどと、ちょっと恨めしいのだが、学生相手に何を喋ろうかと考えるときに意外と自分の中で広がるものがあるので、まあいいか、と思うことにしている。それにしても、ここのところそうやってあれこれ考えてみたことが、『この世界の片隅に』に絡んでこない。なんだか、うんと遠回りしてしまっているような気もしてしまう。

●6月18日(火曜日)

 ようやく自分の仕事場で丸1日過ごせる日がきた。
 のだけれど、別のことに時間を費やし過ぎていて、頭が戻らない。まるで戻らないうちに1日終わってしまう。

●6月19日(水曜日)

 昨年の秋に、文化庁肝煎りで行ったアニメーション・ブートキャンプというワークショップをやって、そこで美大系の大学生に「映像」の手ほどきをするという講師役を仰せつかったのだが、その縁で、ブートキャンプの参加校のひとつだった東京芸大大学院のアニメーション専攻で授業することになり、この日がその初日。ということで、横浜馬車道まで出かける。こういうのって、何を話そうか考えたり、ネタを仕込んだり、映写素材を用意したり、それなりに頭使うものなのだが、それなりに何とかなったのじゃないかと思う。

●6月20日(木曜日)

 そのアニメーション・ブートキャンプなのだが、今後も続けるのか、という件についての連絡会議に呼ばれる。前回の講師だから呼ばれたのだろうなあと行ってみたら、今年もやることになったら頼むぞ的な感じにすでになっている。

●6月21日(金曜日)

 昨年までは日芸では1年生も通年で教えていたのだが、今年から2年生相手にしてもらって、しかも前期はほとんど出なくてもよいようにしてもらってあった。ということで、ほとんどは出なくてよいのだが、とある1日だけは午前中3時間、さらに午後もと集中的に喋らなくてはならないことになっている。そのヘビーなのがこの21日だった。
 夕方になったら、学科の助手から「声枯れてるんじゃないですか?」といわれてしまった。

●6月22日(土曜日)

 やれやれようやく仕事場に落ち着ける、と思ったのだが、やっぱり作品に対する集中が途切れている。
 ところで、この6月22日という日付は、『この世界の片隅に』の中で何度か出てくる昭和20年の呉空襲のうちの1回の日に当たる。気持ちを無理やりにでもそっちの方向に向けるため、朝の警戒警報発令から、空襲警報、爆撃、といったタイムテーブルを自分の中でリアルタイムで味わってみることにする。
 この6月22日は、焼夷弾空襲ではなく、1トン爆弾を主体にした爆弾による空襲であり、それが1時間以上にわたって続いた。焼夷弾ならば火事になるだけだが、爆弾は爆発するものであって、防空壕に隠れ潜んだとしても、大音響と大震動に揺さぶられつづけることになる。自分がそうしたことになっている様を想像しつつの1時間は限度を超えて長くって、それこそ想像を絶した。
 中島本町の場面のレイアウトのラフが上がってきたので、直しの指示を出して、この日は終わり。
 夜は、大学の学生、専攻コースの1年から4年生まで集めたコンパがあるということで顔を出しに池袋までゆく。結局、また3時間くらい喋りつづける羽目になり、しかも大人数がわいわいする中でだったので、声が通るようがなり続けて、結局また声が枯れ気味になってしまった。おまけに、翌週月曜日の授業で話そうと思っていたことを、この飲み会の場で、その授業を受ける学生相手に喋りまくってしまっていた。またネタを考えなくちゃ。

 こんなに本職の仕事以外のことが重なることも珍しいのだけど、さすがにちょっとくたびれた。
 そんな中で、実はずっと、すずさんの声と喋り方について考えてもいたようにも思う。アニメーションは、声を演じる役者を決める前から、台詞のタイミングにつていてのイメージを持っていなくちゃならないのだから、そんなことも必要な頃合いではあった。
 もう少しですずさんの声が聞こえてきそうな気もする。

親と子の「花は咲く」 (SINGLE+DVD)

価格/1500円(税込)
レーベル/avex trax
Amazon

この世界の片隅に 上

価格/680円(税込)
出版社/双葉社
Amazon

この世界の片隅に 中

価格/680円(税込)
出版社/双葉社
Amazon

この世界の片隅に 下

価格/680円(税込)
出版社/双葉社
Amazon