SPECIAL

第22回 1984年(昭和59年)アニメブームの折り返し点──新世代の台頭とスタッフの流出

TVアニメ タイトルリスト1984年

 1984年は、東映動画のふたつの話題作『北斗の拳』『とんがり帽子の メモル』が放映開始された年である。
 『北斗の拳』は「ジャンプ」アニメの1本であり、原作は武論尊と原哲夫。シリーズディレクター(SD)には『アラレちゃん』で実力を認められた芦田豊雄が、キャラデザには竜の子プロ作品で秀逸なアクションを披露してきた須田正己が抜擢された。スプラッター的ともいえる暴力描写を透過光を駆使してソフトに処理し、ギャグと紙一重のシリアスさでこなす演出が斬新で、主演・神谷明によるエキセントリックな絶叫も話題となった。
 『メモル』は同社久々のオリジナル作品。若手の名倉靖博による繊細なキャラクター原案、ベテランの土田勇による水彩画風の美術デザインが理想的な連携を見せた点でも稀有な成功例となった。新旧世代の共演は演出陣にも見られ、SDの葛西治のもと、81年に入社した佐藤順一、貝沢幸男がフレッシュな感性で名作を生み出した。2人は、東映動画が18年ぶりに雇用した正社員(研修生)の一員だった。研修生組にはほかにも西尾大介、芝田浩樹、梅澤淳稔などがおり、それぞれ『アラレちゃん』や『北斗の拳』で頭角を現し始めていた。
 日本サンライズでは監督の富野由悠季が『重戦機 エルガイム』でキャラデザとメカデザに新進の永野護を起用。『機動戦士 ガンダム』の作画監督・安彦良和のTV初監督作『巨神[ジャイアント] ゴーグ』でも、作画の新星・土器手司が注目を集めた。新世代の台頭は、アニメブームがもたらした副産物でもあった。
 ブームの影響は別の側面にも現れた。りんたろう、宮崎駿、押井守などのように、TVの最前線を走ってきた監督たちが活躍の舞台を劇場へと移し始めたのである。83年末、押井監督の『DALLOS』をきっかけに始まったオリジナルビデオアニメーション(OVA)の波も、野心的なスタッフたちを吸収していった。さらに、80年代初頭より増え始めた海外合作TVシリーズがその流れに拍車をかけた。本年以降、出崎統の名前はブラウン管から消えることとなる。合作は国内での放映率が低く、宮崎の『名探偵ホームズ』はわずかな例外といえた。
 こうした動きは業界全体としては取引先の拡大を意味していたが、その一方で、肝心のアニメブーム自体はすでにピークを過ぎ、急速に終焉に向かいつつあった。

EMOTION the Best 重戦機エルガイム DVD-BOX1

価格:15750円(税込)
仕様:カラー/5枚組
発売元:バンダイビジュアル
Amazon

巨神ゴーグ DVD-BOX

価格:36750円(税込)
仕様:カラー/8枚組
発売元:flying DOG
Amazon

EMOTION the Best 名探偵ホームズ DVD-BOX

価格:15750円(税込)
仕様:カラー/5枚組
発売元:バンダイビジュアル
Amazon