COLUMN

第282回 からてーきゅう

……で! 出崎『空バカ』の最大の特色は
「無駄なアクションをしない」って事です!

ドラマ、ドラマで定評のある出崎監督ですが、一方で迫力あるアクションシーンでも評価の高い監督でもあります。でもそれはメチャクチャ巧いスーパーアニメーターが描かないと成立しない迫力ではなく、どんなアニメーターが描いてもある程度のものになるようなカット割りがすでにしてある——「演出で魅せる」アクションなんです、出崎さんのは! だから本当に無駄がない。いや、むしろ演出で支配したアクションでないと、それが迫力があって面白い動きになればなるほどフィルムの流れを遮断するだけで、かえってドラマの邪魔になるんじゃないでしょうか。だから『空バカ』第36話「月光にきらめくカマキリ拳法」におけるバリ島拳法の達人・セオロとの対決も、ただバトルして勝った負けたではなく、実に巧みに瞬間瞬間を刻んで飛鳥拳のモノローグを挟んで格闘の臨場感を演出するのに成功しています。とにかくオセロが喋らないのがいい!

格闘家同士は言葉ではなく互いの技と技で語り合う!

それが実に見事に描けてます! 後の『ブラック・ジャック』でもBJは手術中に病気(病原体?)に語りかけるように手術をするんですが、出崎『空バカ』はそれを思い出させます。つまりこの36話の最後まで観れば、たとえシリーズ一貫した大木民夫のナレーションと被ろうとも飛鳥拳のモノローグを入れた出崎さんの演出意図はハッキリ分かるでしょう。
 そして、次は第40話——