COLUMN

第192回 1970年の夏休み

この原稿が更新されるのは、たぶんお盆あたりかと思います。その頃にはロンドン五輪も終わり、その余韻にふんわり浸りつつも、皆さん帰省とか夏休みの旅行とか、なのかな? そんな感じで夏休み。今週は夏休み特番のため「『輪るピングドラム』色彩設計おぼえがき」はお休みです(笑)。

さてさて。
東京生まれ、東京育ちの僕と奧さんなので、我が家は「帰省」といった大がかりなイベントがありません。さらに僕は少年時代に「田舎体験」がなく、小学生の頃、クラスメートが「田舎」に遊びに行くってのが多少羨ましく感じてました。あ、そういえば「なんでウチには田舎がないの?」とか、母に訊いたことがあったよなあ。小学校低学年の頃のお話です。

小学校時代、東京・中野の僕の夏休みは、朝顔とラジオ体操と学校のプールと午前中のアニメでした。
まずは朝6時起き。「今朝はどれが咲いたかな?」我が家は毎年、たくさんの種類の朝顔を鉢植えで育てていて、毎朝違う色の花が咲くのが録っても楽しみでありました。我が家の朝顔は大輪系のものが主流。何年もの長きにわたって、毎年ちゃんと種を採っておいて、ちゃんと小袋にメモつけて(例えば「ムラサキ大輪しぼり」とか)整理して、そして翌年時期を見て種を蒔いて、夏の朝の楽しみにしておりました。
ひととおり縁側の朝顔を見て回った後、近所の中学校の校庭へ。6時半からはNHKのラジオ体操です。首から紐で下げる仕様の「ラジオ体操のカード」があって、毎日体操したあとにハンコをもらっていくのです。なんとなく町内会的に義務づけられてたのは7月31日までで、夏休み入ってから約10日間、皆勤すると何か記念にもらえた記憶があります。鉛筆かノートかそんなもの。夏休みのはじめからとりあえず7月中ってコトだったのは、たぶん子供たちに夏休み中も規則正しい生活を送らせるための施策だったんでしょうね。別に8月1日以降もラジオ体操は夏休みいっぱいずっと中学の校庭でやってたんだけど、ついぞ僕は行かなかったですね(笑)。たぶんそこそこ早起きはしてたハズなんだけど、なんでかな? 行かなかったですね(笑)。
で、帰って来て朝ご飯。そして母親に言いつけられるまま掃除のお手伝い。終わるとだいたい9時であります。
今の小学校はどうなのか知らないですが、僕らの時代は夏休み中、学校のプールが児童に開放されておりました。あ、開放っていうと語弊がありますね。午前と午後、だいたい1〜2時間くらいずつ、たしか2学年ごとに「プール教室」みたいなスケジュールが組まれてて、まあ授業ではないんだけど緩くそんな感じで。そこへ海パンとバスタオル、それと水泳帽(!)をビニールのバッグに入れてビーサン履きでペタペタと学校へ行っておりました。
正直言ってプールあんまり好きじゃなかった僕です(笑)。そりゃ泳げればかっこいいけど、別に泳げなくってもいいって思ってたので(笑)、でも何となくプールのある日は最優先的にプールに行くことになってて、なので、ペタペタと通ってたワケです。

そんな学校のプール、なんとなく行きたくなかった理由がもうひとつ。実は午前中にプールがあると、午前中のアニメが観られないのです。
当時東京では夏休みの平日午前中、だいたい10時くらいから1時間か1時間半、アニメの再放送をやってたのです。現テレビ朝日がかなり積極的に放送しておりました。「夏休みこども劇場」とかそんな感じ。アメリカものの吹き替えアニメ『チキチキマシン猛レース』とか『親指トム』とか『キングコング』とか『ドラドラ子猫とチャカチャカ娘』とか『スーパースリー』とか。それと日本モノでは『魔法使いサリー』とか『ひみつのアッコちゃん』とか『花のピュンピュン丸(ピュンピュン丸)』とか。そういうのをね、ずっとやってたわけですね。
これがね、ほんと楽しみだったんですよ。夏休みに限らず、冬休みも春休みもそんな編成でアニメやってはいたんですが、いかんせん冬休み、春休みは短い。なので作品によっては当然途中で放送が終わっちゃうわけです。まあ編成的には「傑作選」的に放送してくれてるんだけど、こっちとしては全部観たいわけじゃないですか! なので放送期間の長い夏休みはかなりポイント高かったわけですよ!
夏休みに関係なく、各放送局とも夕方の時間帯はアニメの再放送枠があったのですが、朝(午前中)からアニメが観られるンですから、そりゃもう嬉しいですよね!
なので、その時間、親に文句言われないようにアニメを観るために、ちゃんとその前に日々のお勉強、夏休みのドリルとかをやり終えて、満を持してTVの前におりました(笑)。早朝のラジオ体操よりもこの午前中のアニメのおかげで、夏休み中規則正しく生活できた、そんな小学校時代でありました(笑)。
ちなみに午後は何やってたかというと、虫取り網持ってセミを追いかけておりました(笑)。お店で売ってる虫取り網だとそんなに高いところまで届かないので、自分で竿を継ぎ足したりして、樹の幹の高いところで鳴いているセミを捕ったりしてましたよ。夕方には蚊に刺されながら庭の草木に水まきやったりね、週一くらいのペースで夜は花火やったりね(笑)。我が家は別段海水浴にも行かず、「田舎」への帰省も、夏休みの旅行もない家庭でしたけど、それでもかなり真っ黒になってたなあ。

ああ、なんか、オジサンの過去回想でありますね(笑)。幸せな記憶、よい想い出たちであります。
今時の小学生って、どんな夏休みの生活なんでしょうね? 僕ら夫婦には子供がいないので、そのヘンがよく分かってなかったり。ああ、今ならサッカーとかそんな課外活動みたいなのが活発なのかな? あるいは学習塾通いなんでしょうかね? 僕の子供の頃に比べたらずっと、いっぱい楽しいことがあるんだろうけど、やはりね、夏休みは、小学生向けに毎日午前中アニメを放送して欲しいなあ、って思うのであります。