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第10回 1972年(昭和47年)激動の東映動画から、永井豪アニメの代表作生まれる

 1972年は、『デビルマン』『マジンガーZ』が放映開始され、永井豪アニメの時代が幕を開けた年である。
 製作はともに東映動画。7月に始まった『デビルマン』は、永井の原作『魔王ダンテ』を発展させたオリジナル作品。主人公が変身・巨大化して敵と戦う設定など、第2次怪獣ブーム(変身ブーム)の要素を巧みにアニメに移植、夜8時30分という遅い時間帯ながら子供たちの人気を獲得した。だが番組開始直前、同社は異例の事態を迎えてしまう。親会社である東映が、赤字が累積していた東映動画に対し、大量の希望退職者募集など徹底的な合理化に乗り出したのだ。労使間の交渉は暗礁に乗り上げ、会社側は8月3日、ついにスタジオのロックアウトを断行する。制作中の素材はすべて社外に運ばれ、12月26日までの約5ヶ月間、非組合員及び外注のスタッフによって作業が行われたのである。12月にスタートした『マジンガーZ』は、まさにそんな混乱の渦中で企画準備が進められたが、巨大ロボットものという新たなジャンルを確立した点で画期的だった。巨大ロボットが主役の作品には『鉄人28号』という先例があるが、本作は主人公が直接ロボットの頭部に乗り込み、一体化して操縦する点が新しかった。本編と連動して発売された超合金などの玩具も大ヒット。版権ビジネスの成功例として、業界に大きな示唆を与えることとなる。経営不振が原因となる紛争の末期、はからずも産声を上げた本作が、やがて同社の経営を改善させる試金石の役割を果たしたことは、皮肉な因縁を感じさせる。
 この年は、後のアニメブームへと連なる重要な2作も登場した。竜の子プロの『科学忍者隊 ガッチャマン』は、総監督・鳥海永行のもと、流麗な肉弾アクション、シャープなメカニック描写、人物たちの内面を掘り下げたドラマなどがバランスよく融合し、2年にわたるロングラン放映を記録。アニメーションスタッフルームの『海の トリトン』は、プロデューサーを西崎義展、監督を富野喜幸(後の由悠季)が担当。原作は手塚治虫だが、アニメ版は独自の展開を見せ、特に最終話には、後の富野アニメに受け継がれるテーマの萌芽が見られた。両作品は、女子高・大生がアフレコ現場を訪れたり、熱心なファン同士の交流を行ったことでも知られている。70年代後半、マスコミの目にも顕在化していくアニメファン第1世代は、すでにこの時期から胎動を始めていたのだ。

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