COLUMN

第189回 『輪るピングドラム』色彩設計おぼえがき その16

祝! 雑誌「アニメスタイル001」。
なんと編集部からいただいてしまいました。去年の「アニメスタイル」第1号〜6号も濃かったですが、いやあ今回のこの新創刊の本も濃い。そして『おおかみこどもの雨と雪』まみれ(笑)。ああ、こりゃ、劇場で先に観てきてからじゃないと読めないじゃないか!
というわけで(笑)、仕事抜け出してさっそく劇場で観てまいりました、映画『おおかみこどもの雨と雪』であります。
いやあ、すっごく「映画」でありました。素晴らしい! すごいなあ! ああ、なかなか難しいテーマのお話だからこそ、こうやってアニメーションだからやりきれるんだなあ! という作品。見事です! 細田監督にはこれからもこんな風にガンガン映画作っていって欲しいです!
皆さんも是非ぜひ、劇場に足をお運びください! 僕もどこかでもう一度観ておきたいです!

さてさて。
13話からエンディングが新しくなりました。楽曲はトリプルHが歌うARBの名曲カバーたちであります。もちろん編曲は橋本由香利さん! 新エンディングは1曲に固定せずに、その回の本編の内容、テンションに合わせて使用する曲を決定していくとのこと。で、最初の13話では「灰色の水曜日」。この曲は結果的に3回使われましたね。
今回のエンディングは撮影さん主導で作られてます。まず監督がグラフィニカの堀内さんにコンセプトを説明して、ひな形の映像を作っていただきました。使用する楽曲や内容に合わせてそのひな形を毎話修正して作っていきました。浮かんでる星たちやリンゴ、赤い糸もすべて3Dと撮影で作ってもらってます。
僕の作業的には、中村章子さんの作画(プリンセス陽毬+ダブルH)の色指定と、エンディング全体の色味の監修でありました。毎回の内容チェックは監督と章子さんと僕と。堀内さんから上がってきた毎話のエンディング映像を見ながら、タイミングや色味について修正注文を出していって、それを反映してもらっていきました。
前回のエンディングでは僕が彩色も担当して、自分で色を塗りながらどんどん修正していってイメージ作っていったわけですが、今回は僕が本編の設計業務やらリテイク処理の舵取りやらで時間がなかったこともあって、プリンセス陽毬+ダブルHの彩色は色指定の大塚さんに急遽お願いしました。
「実は中村さんのダブルH、すっごく塗りたかったんですよ!」と大塚さん。ああ、そうなんですよね! 僕ら仕上げの人間はやっぱりいい作画の絵、お気に入りの絵柄って塗りたいんですよね! すごく時間のないところでムリなお願いしたにもかかわらず、大塚さん、丁寧に見事に塗り上げてくれました。
で、その彩色データに線の処理とか質感ブラシとか施して撮影へ。それを挿し込んでエンディングはほぼ完成です。最初にできあがってたムービーでは、バックが赤いバージョンで、これがマスター。13話用には「灰色の水曜日」使うということもあって、バックを灰色にしてもらってます。さらに16話ではバックをブルーに、そして楽曲あわせでかなりはっちゃけた感じにいろいろ盛っていただきました(笑)。
エンディングの最後に男の子の手が出てきますが、「片方はシルエットで」というのは監督の指示でした。どっちが誰の手で、ということはなくて、画的なバランスで右側をシルエットっぽくしてあります。

で、エンディングが新しくなるってコトは、ひょっとしてオープニングも?(汗) でも本編の作業の遅れで制作現場はかなりいっぱいいっぱい、「いやあ、現場的にムリなんじゃね?」的な状況が正直なところ。監督自身も「オープニングってさ、『顔』だから変えたくないんだよねえ」と。
……ところが、ある日いきなり、「スマン! やっぱ新しいオープニング作ることになった!」と監督(笑)。なんといきなりの掌返しでありました!