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第1回 1963年(昭和38年) TVアニメの時代が始まる

 1963年は、日本初の30分TVアニメシリーズ『鉄腕アトム』が放映開始された年である。
 1月1日の18時15分、フジテレビにて本作はスタート。製作を手がけたのは、漫画の神様・手塚治虫率いる虫プロダクションだ。無類のデイズニーファンとして知られ、以前からアニメーション制作に強い関心を抱いていた手塚は、東映動画の劇場用長編作品『西遊記』(60)への参加を経て、61年、自宅の敷地内に自身のスタジオを設立した。実験映画的な短編『ある街角の物語』(62)に続き、わずか40名強の少人数スタッフとともに、この『鉄腕アトム』に着手。週1回、30分放映というTVシリーズの制作ペースは、当時の同業者の眼には無謀とも映る挑戦であった。それを可能としたのは、“3コマ撮り”を主体とした作画や“口パク”“バンクシステム”など兼用セルの多用などによる徹底した作画枚数節減の試みであり、同時に手塚自らがTV局及び代理店に当初提示した、1話につき55万円という安価な制作予算であった。
 同じ業界関係者や従来のアニメーションファンのなかには、その省略化された動画表現に抵抗を覚える者もあり、初期TVアニメは“電気紙芝居”という揶揄さえ受けることになる。だが、そういったアニメーションとしてのクオリティに対する懸念や批判とは裏腹に、『鉄腕アトム』は、放映されるや子供たちに大好評を持って迎えられた。そこには、作画枚数の少なさを補おうとするカット割りや編集、撮影、音響などの工夫、何よりもテンポよく進行するストーリーの魅力があったことは間違いないだろう。TVアニメは放送・映画業界が注目する新メディアとして認知され、その勢いに刺激されるように、後続のテレビアニメ作品が続々と生まれていった。
 CMアニメーションを制作していたTCJは同年春、社内に映画部を設立しテレビアニメに進出。9月に『仙人部落』、10月に『鉄人28号』(以上、ともにフジテレビ系)、11月に『エイトマン』(TBS系)を送り出す。
 一方、老舗である東映動画も、劇場長編『ガリバーの宇宙旅行』の制作を一時中断し、テレビアニメのための制作班を編成。社内の若手ホープであり、かつて手塚のアシスタントを務めたこともあるアニメーター・月岡貞夫を起用することにより、第1作『狼少年ケン』(NET系)の放映開始を年内に間に合わせることに成功した。

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データ原口のサブコラム

 「国産初のTVアニメ」といった呼ばれ方をされることの多い『鉄腕アトム』だが、正確には「国産初の30分TVアニメシリーズ」である。これ以前にも、30分ではない、あるいはシリーズではない国産のTVアニメはいくつか存在していた。例えば1958年7月、村田映画出身の鷲角博が日本テレビの依頼でカラーTV用のテスト作品『もぐらのアバンチュール』を制作しており、同作は58年10月15日に日本テレビの夕方枠で放映もされている。現時点で確認できる最初のTVアニメはおそらくこれだろう。つまり、日本初の劇場用カラーアニメーション長編『白蛇伝』の公開(58年10月22日)よりも先に、初のTVアニメは誕生していたのだ。
 続いて、60年1月15日にはNHK総合にて、3話オムニバスによる切り紙アニメーションのスペシャルアニメ『新しい動画 三つのはなし』が放送。この企画をきっかけとして同年4月から、アニメーションを含むミュージッククリップ番組の草分け『みんなのうた』が開始されており、これもアニメ・実写併用のミニシリーズのひとつと数えてよいだろう。
 さらに61年5月からは、フジテレビで『インスタント・ヒストリー』がスタート。漫画家の横山隆一主宰のおとぎプロダクションが制作したシリーズで、1回の放映時間はわずか4分(CMを除くアニメ部分は実質1分)ながら、日曜から土曜までの週7日にわたって新作が放映した点では画期的だった。再びこの番組形態が登場するには、2009年4月の『キャラディの ジョ〜クな毎日』まで、48年の歳月が必要であった。

(12.06.13)リスト修正
(12.06.25)サブコラム修正